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「人類の共創的未来へ」学長 土屋 恵一郎

「明治大学」を指示するとしたら、なにをもって「明治大学」であるというのだろうか。キャンパスのある場所であるのか。建物であるのか。組織であるのか。構成員である教職員や学生であるのか。校友であるのか。父母であるのか。その歴史なのか。おそらくこれらすべてがそれぞれの存在を主張しながら、寄り集まったアッセンブリー(集合体)が、明治大学であるにちがいない。時として、「明治は一つ」という言葉も聞こえるが、このアッセンブリーになった多様性としての明治大学の姿を理解してもらわないと困る。大学は決して一つの中心に統一されるものではない。アッセンブリーとしてそこには、多様な意見があり、批判があり、多様性の承認がなければならない。そこに初めて、大学の力というものがあらわれる。だれかの言うことを聞けという声ではなく、多くの声、多声体となったアッセンブリーの声を聞きながら、妥協もし融和も行い、それぞれの独自性も承認して、前進していかなければならない。それこそデモクラシーである。

さらに今は、大学の外にも、多くの声がある。日本社会からの声、アジアからの声も、そして世界からの声もある。日本の私学を代表する大学として、人類の課題にこたえていくことは明治大学の義務でもあり、役割でもある。世界のネットワークのなかで、明治大学の教職員と学生がなにを遂行していくのかが問われる。世界もまたアッセンブリーである。このアッセンブリーとしての世界のなかで、日本の大学としていかなる声を発していくのか。研究において、教育において、なにができるのかが問われている。

たとえば、ラテン・アメリカで明治大学はなにができるのか。そう問い続けると、今までは、遠い存在であったラテン・アメリカが、明治大学が参加するアッセンブリーとして見えてくる。日本政府は来年サンパウロにジャパン・ハウスを開設する。世界に3カ所開設されるうちの一つである。私は、この話が出てきた時、このジャパン・ハウスに明治大学のマンガ図書館分室に近いものが開設可能ではないかと提案した。北京大学に開設しているものに近いものである。北京大学でのマンガ図書館開設が、その後の北京大学と明治大学との関係の強化に大きな役割を果たしたように、サンパウロにおけるマンガ図書館分室の開設は、サンパウロ大学を中心とする明治大学の「ラテン・プロジェクト」を発展させていくきっかけになる。さらに明治大学のラテン研究者を結集すれば、明治大学独自の「ラテン・プロジェクト」を推進していくことができる。現在はないポルトガル語科目も設置すれば、明治大学における多言語教育を充実することができる。

明治大学の声を世界に。そして世界の声を明治大学に。その声のアッセンブリーのなかで、人類の共創的未来に学生も教職員もかかわることができれば、明治大学の国際戦略は、大きく前進することができるにちがいない。