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本棚「明治大学文人物語—屹立する「個」の系譜—」吉田 悦志 著(明治大学出版会、3,200円+税)



長年にわたり明治大学史の研究に携わって来られた吉田悦志教授が、これまでの大学史研究の成果を一著に纏められた。題して「明治大学文人物語」。氏の筆は、岸本辰雄ら創立者の三人に始まり、平出修・尾佐竹猛・笹川臨風から、中村光夫・平野謙・子母澤寛を経て、岡本喜八・阿久悠・北野武らに至る、明治大学ゆかりの「屹立する《個》」たちの底流に滔々と流れる水脈を探り出そうと縦横無尽に躍動する。「長い年月を経て日本海側地域の大衆と彼らを囲む風土が、培い育み定着させてきた精神文化が、フランス民主主義とフランス法学に触れて、内実を伴った明治大学の思想や特色と化し」、明治大学で教え・学ぶ者たちは、その出身地は何処であれ、伝統と化した厚みのある学的人的環境の中で、「権利・自由」「独立・自治」という地域性と思想が囲繞する「空気」を吸うことで、その活躍した分野も歴史的役割も様々ながら、みな明治大学の歴史を刻む一員となった、と我々に語りかける。吉田教授の明治大学への眼差しは、厳しいけれど、また実に優しい。

村上一博・法学部教授(著者は国際日本学部教授)