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論壇「男女共同参画の視点に立った意識の改革」

副学長(男女共同参画・障がい者少数者支援担当) 浜本 牧子

本学は、男女共同参画社会の実現に向けた施策を総合的かつ計画的に推進するために、「明治大学男女共同参画推進基本計画」を2016年に定めた。この基本計画では「基本理念」を掲げ、以下の7つの「基本方針」の下、2016年度から2019年度までの4年間を実施期間として様々な施策に取り組むこととしている。

  1. 男女共同参画を促進するための教育・研究体制の構築
  2. ワーク・ライフ・バランスの積極的な推進
  3. 意識改革と理解の促進
  4. 次世代の女性研究者育成
  5. 意思決定過程における女性リーダーの養成
  6. 地域社会等との連携
  7. 国際化への対応
本稿では、男女共同参画社会の実現に向けた、「性別に関係なく個性と能力を十分に発揮できる環境づくり」について、基本計画の2及び3に焦点を絞って述べてみたい。

本学では、教育・研究・就業とライフイベントを両立できる環境づくりのために、多様な両立支援制度が整備されている。具体的には、福利厚生制度(介護・出産・育児に伴う支援措置など)、2014年度に採択された文部科学省の科学技術人材育成費補助事業「女性研究者研究活動支援事業」(一般型)の取り組みの一つとして構築された研究者支援制度(研究サポーター制度、保育費用補助制度)などである。これらの制度については学外からも高く評価されているが、次世代の研究者育成の視点からは大学院生に対する両立支援や環境整備が喫緊の課題である。

「性別に関係なく個性と能力を十分に発揮できる環境づくり」のためには、両立支援などのハード面の整備はもちろん大事であるが、意識の改革というソフト面の整備も必要である。働き方改革で有名な資生堂では、ライフイベントなどの状況にかかわらず活躍できる職場環境づくりを推進している。具体的には、残業ができないなど時間的な制約がある社員にも、能力とやる気を客観的に判断した上で、責任が伴う仕事を任せるという組織改革をトップダウンで行っている。この組織改革により、時間的な制約がある社員がやりがいをもって働ける活躍の場が広がり、職場の不公平感も解消され、その効果は業績にも表れているそうだ。

このような組織改革を行うには、一人ひとりと個別に面談したり、周りの理解を得たりときめ細やかな対応が必要であり、時間もかかるであろう。一方で、大切なことは、個々人の意識を変えることではないか。具体的には、時間的な制約があるから責任が伴う仕事は任せられない、残業ができないから責任のある立場にはなりたくない、責任を負うのが嫌だから役職・管理職には就きたくないなどの意識を変えることである。資生堂の事例からも、個々人の意識が変わり、それぞれのライフステージに合わせた活躍の仕方を考えていくことが、個性と能力を十分に発揮できる環境づくりにつながる。

意識を変えることは容易ではないが、男女共同参画の視点に立った意識の改革は、本学の持続的発展を支える改革の一つとして極めて大切だと考える。
(農学部教授)