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祝 辞「未来の担い手となる皆さんへ」理事長 柳谷 孝

卒業ならびに修了にあたり心からお祝いを申し上げます。それぞれの課程を修め、学位を取得されたことに対し深く敬意を表します。また、ご家族をはじめ、ご列席の方々にもお慶びを申し上げますとともに、本学への多大なるご理解とご支援に厚く御礼を申し上げます。

さて、私たちは今、後の歴史に問われるであろう大きな転換期に差し掛かっています。イギリスでは国民がEU離脱を選択し、アメリカではトランプ大統領が国益を優先する政策転換を先導しています。日本では、平均寿命の最高記録を更新し続ける傍らで、出生数が100万人を下回り、総人口が減少局面に入ったことも明らかとなりました。AIの進化の行く末には、利便性の向上ばかりでなく、人間が行うべき仕事が奪われ、「デジタル難民」が出現するという一つの未来展望が示されています。

このように変化が激しく、先行き不透明な社会情勢は「未来予測が困難な時代」と表現されています。私は、明治大学を卒業される皆さんにおいては、決して未来を悲観的に捉える必要はないと考えています。なぜなら、皆さんは「予測困難と言われる未来を創造していく方々」であり、「未来の担い手そのもの」であるからです。

皆さんは、これからもその時々にあらわれる岐路でどの道を行くべきか選択を重ねていくことになります。ITの進化により私たちが触れる情報量は格段に増えましたが、その膨大さゆえに、方向感覚が揺らぎ、進むべき道を見えにくくしています。かの黒田官兵衛は「分別過ぐれば、大事の合戦は成し難し」と言いました。悩みも過ぎればかえって決断力が鈍り、行動が伴わず、ひいては勝機も逃すという一つの真理を示しました。状況が刻々と変化する中においては、臨機に対応や判断をしていく柔軟性が重要といえます。ひとたび方向性を定めたならば、「前」へ踏み出してください。前へ踏み出す勇気を胸に、高き理想の道を進んでいってください。

明治大学を卒業して世界の荒波を前に船出をされる皆さんの前途は、大きく開かれています。不屈の明治魂を胸に、失敗を恐れず、挑戦を諦めず、強い信念と勇気をもって、進むべき未来へと時代を切り拓いていってください。そして、地球市民の一員として、国や人種の違いを超えて協調できる世界を希求するとともに、人類と地球環境の調和した未来を創造することに、皆さん一人ひとりが貢献してほしいと願っています。

本日の新しい門出に際し、皆さんの前途に幸多きことを心から祈念いたし、祝辞といたします。