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資源利用史研究クラスター シンポジウム「縄文の塩—土器製塩の技術と展開—」

研究者による密度の高い討論が行われた

明治大学資源利用史研究クラスター(代表=阿部芳郎文学部教授)は10月8日、シンポジウム「縄文の塩—土器製塩の技術と展開—」を駿河台キャンパス・グローバルホールにて開催した。

日本の塩作りは古代の文献史料にもあるように海草を用いたことが古くから指摘されてきたが、その具体的な方法についてはこれまで推測にとどまり、科学的な検証が行われてこなかった。本クラスターでは製塩遺跡に堆積した土壌中から海草に由来する複数の微小生物遺存体を発見し、それらがいずれも被熱していることに注目し、海草を焼いた灰と土器を用いた新たな製塩技術の解明に成功した。また、これらの出土資料の年代からこれまでの定説であった約3000年前から、少なくとも2000年も古く遡る約5000年前から海草を用いた塩作りが行われていたことが明らかになった。今回はその成果を公開するとともに、関東地方における製塩遺跡の実態を検討した。

さらに各発表では関東地方の小地域に絞った製塩遺跡の検討を行い、霞ケ浦から土器製塩が発生したというこれまでの仮説とは異なり、より広い地域で多様な製塩活動が行われた可能性が高いことが明らかにされた。

討論では製塩研究の歴史をたどりながら、確実で詳細な事実を前提に議論が進められ、会場からも多くの質問や意見が述べられるなど、今後の製塩研究の指針を得ることができた。

シンポジウムは縄文時代から古代までの製塩の研究者も併せ113人が参加。次回を期待する声も多く、研究クラスターの次年度以降の継続的な課題として研究を進めたい。
(文学部教授 阿部芳郎)