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ズームアップ第570回「チームファースト貫いた女房役」

準硬式野球部 金子 昂平



投手を支え続けた女房役が、野球人生に幕を閉じる。引退前最後の試合に惜しくも1点差で敗れ、金子昂平捕手(営4=済美)は「悔しいのとようやく終わったという両方」と振り返った。

中学時代は中田翔(北海道日本ハムファイターズ)も輩出した名門チーム・広島鯉城シニアに所属。もともと投手だったが、守備を重んじるチームで捕手に抜てきされ、厳しい練習や毎週行われる勉強会で、捕手のいろはを叩き込まれた。その後は済美高に進学し、怪物エースと言われた安楽智大(東北楽天ゴールデンイーグルス)とバッテリーを組む。「安楽がいて甲子園に行けないのはキャッチャーのせい」という重圧に耐えながら、チームを選抜大会準優勝まで導いた。捕手としての武器は「観察力と勘」。常に周りを見て、他の選手への気配りを欠かさなかった。

チームのことを一番に考え続けた。大学進学の際、関西の名門校からも声がかかっていたが、恩師の故・上甲正典監督から明大への進学を強く勧められた。硬式で続けることを希望していたため「初めて監督に反抗して、最後は泣きながら『はい』と言った」。入学当初は出場機会に恵まれず、上級生になってもケガに苦しんだ。それでも出場しない時もデータ分析、選手のマネジメントを徹底。スポーツ推薦の選手が活躍する中、悔しい思いもしたが「本当に楽しく野球ができた」。野球人生最後の舞台を、準硬で終えることに後悔はなかった。

捕手になったことは「人生の分岐点」だ。周りを見る能力、そして信頼。野球人生で培ったことはこれからも生かされていく。また「キャッチャーを追求したい」と、指導者への意欲を見せた。「キャッチャーというポジションが大好き」と語る最高の女房役は静かにミットを置く。

(かねこ・こうへい 営4 済美 165cm・60kg)

文/織田有衣子(商2) 写真/相澤日向(文2)