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リバティアカデミー 「『イスラーム』を問い直す」を開催

満員の会場は熱気に包まれた イスラーム像の再構築の重要性を説く横田准教授

明治大学の生涯学習機関・リバティアカデミーは11月11日、オープン講座「『イスラーム』を問い直す—『イスラーム国』がもたらした再考の契機」を和泉キャンパス・和泉図書館ホールで開催した。杉並区教育委員会との共催で行われた本講座の講師は、中東地域研究・イスラーム主義運動研究が専門の横田貴之准教授(情報コミュニケーション学部)が担当した。

冒頭、横田准教授は、「イラク・シリアにおける『イスラーム国(IS)』の支配地域が縮小し、退潮が顕著との報道はあるが、依然として世界各地における影響力は根強い」と言及。講座の前半では、「IS」を単なるテロ組織として考えるのではなく、「IS」発生に影響を与えたとするアル・カーイダや近年のイスラーム世界で勢いを増すジハード主義の系譜、冷戦や2010年にチュニジアでの民主化運動を契機に中東や北アフリカへ広がった「アラブの春」による政治変動の影響などの視点から概観した。

後半は「IS」成立をきっかけとした、中東の治安悪化や内政への波及、イラン・シリアへの外国人戦闘員流入と戦闘員の自国帰還、テロの脅威、内戦激化に伴う難民問題、難民・移民増加による欧州での排他主義・右派政党の伸長といった、中東やイスラーム世界のみならず、「IS」の思想が世界各国に生み出すさまざまな「IS現象」の影響について解説。日本における影響にも触れ、「大学生の『イスラーム像』の変化が顕著。イスラーム世界は恐ろしい存在であり、異文化理解や多文化共生はできないと初めから負のレッテルを貼ってしまっている傾向がある」と明かした。

最後には、「『IS現象』を受け、『イスラーム』を多面的に捉えられない状況にある。敵視の対象にするのではなく、交流・相互理解をすることが大事である」と重要性を説き、講座は盛況のうちに終了した。