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教養デザイン研究科 開設10周年記念シンポジウム「越境する知—— 現代世界の危機と学問の未来」

鋭い視点で講演を行った汪氏と柄谷氏(右) 高い関心を集め会場は満員となった

大学院教養デザイン研究科は11月25日、研究科開設10周年を記念したシンポジウム「越境する知  現代世界の危機と学問の未来」を和泉キャンパス・メディア棟で開催した。

同シンポジウムは、大学における人文知(教養)が、国家の関与と資本の要請によって自立性が失われつつある昨今において、人文知こそが、政治、経済、環境など現代社会が抱えるさまざまな課題を明らかにする力になりうると示すことが目的。第1部では、在籍する大学院生3人によるセッション、第2部では、著名な思想家2氏による講演が行われた。

第2部の冒頭、坂本恒夫大学院長があいさつに立ち、「教養とは、学問の分野を越えて幅広く学び鍛錬をすることで、豊かな思考の基礎が養われ無限の可能性が広がっていく」と薩摩秀登同研究科長の言葉を引用。続けて、「この姿勢がまさに今の時代に求められている。教養デザイン研究科が明治大学に存在する意義は大きい」と期待を寄せた。

講演では、はじめに中国の思想家で清華大学人文与社会高等学術院教授の汪暉氏が登壇。「十月の預言と危機——1917年ロシア10月革命を記念して」と題して、ロシアで起きた世界初の社会主義革命の要因や経緯などを説明するとともに、中国における社会主義の経験、アジアにおける影響について言及した。

続いて、哲学者で元法政大学教授の柄谷行人氏が「資本の力に抵抗する力」をテーマに講演。自身が2000年に設立した資本と国家への対抗運動組織=NAM(New Associationist Movement)の原理、労働者と消費者、生産過程と消費過程が結びつく交換様式などについて解説した。

その後の質疑応答でも、会場からのさまざまな質問に2氏が対応。来場者の人文知を大いに刺激する内容で、シンポジウムは盛況のうちに終了した。