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理工学研究科・総合芸術系(PAC) シンポジウム「火山のめぐみ」を開催

理工学研究科建築・都市学専攻総合芸術系は12月2日、中野キャンパスホールにてシンポジウム「火山のめぐみ」を開催した。火山島に暮らすことの意味、火山をめぐる神話、災害後の復興への歩みなどをめぐって、6人の発表者が領域横断的な考察を魅力的なスタイルで紹介した。

いうまでもなく日本列島は火山が生んだ列島だ。最初の発表者は写真家の赤阪友昭氏。日本神話がいかに火山を神として描き、類似の神話が太平洋をわたったアラスカの先住民にも見られるかを論じた。つづく大辻都氏(カリブ海文学)はフラの踊り手として、ハワイの火山の女神ペレがいかに今日も伝統舞踊において大きな意味を帯びているかを語った。井上昭洋氏は文化人類学者。ハワイ先住民の伝統的な土地利用を、きわめて興味深く概説した。

松田法子氏(領域史)は日本の温泉地の研究で知られる。今回は火山国アイスランドへの旅を詩的なスライドショーで追体験させてくれた。大川景子氏(映像作家)は小説家・ドリアン助川氏が三宅島でとりくむトマト栽培を短篇ドキュメンタリーで紹介。最後を飾る津田直氏(写真家)は、フィリピンのピナトゥボ火山噴火で大きな被害をこうむった先住民社会の復興の様子を、感動的に語った。

火山は、現代社会が忘れがちな<聖なるもの>への感覚を、強烈なかたちで教えてくれる。火山とともに生きる我々の運命を肯定的に捉えなおす、またとない機会だった。
(理工学部教授 管啓次郎)