Go Forward

ブレグジットで揺れるイギリスのある街を訪ねる機会があった。空港からその街に向かうため、映画ハリーポッターでもお馴染みのロンドン・キングスクロス駅に着くと驚いたことに、以前はなかった自動改札機が駅入り口に横一線に並べられていた。ヨーロッパの都市間鉄道では改札口がなく、街のランドマークである駅舎では人の往来が自由であり、独特の旅情や雰囲気を醸し出していたのだが、今ではそれが味わえなくなりつつある。

自動改札機ができたのは、鉄道改革で何社ものオペレーターが列車運行事業に参入し、運賃の取りっぱぐれを危惧したためである。必要とされる技術や仕組みは世の中や人々の暮らしを変えるとともに国や企業の栄枯盛衰にも繋がる。

技術や仕組みの進歩は多くの人々に幸せをもたらす一方で、心を豊かにしたくらしや風景は失われ、それに取り残される者もいるかもしれない。諸行無常であり、人は変わりゆく環境の中で生きていかなければならないが、失われるものの影響に気づくとともに、取り残されるかもしれないマイノリティーを気遣う余裕を持ちたいものである。