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本棚『覚せい剤取締法の政治学—覚せい剤が合法的だった時代があった—』西川 伸一 著 ロゴス、2,200円+税



本書は『オーウェル『動物農場』の政治学』『城山三郎『官僚たちの夏』の政治学』に続く著者の政治学シリーズ第3弾である。覚せい剤取締法の成立過程を丹念に追いながら、生々しい政治の現実に迫る。

かつて覚せい剤は合法だった。戦争中には兵士の戦意を高揚させるために使われた。戦後には疲労や憂鬱から人を解放するものとして流行し、織田作之助や坂口安吾、太宰治も常用していた。結果、中毒者が増えて社会問題となる。覚せい剤の使用が禁止されるのは、覚せい剤取締法が施行された1951年以降のことである。

覚せい剤のような「反社会的薬剤」には、社会矛盾の本質が潜んでいると著者はいう。戦時中、勤労動員された生徒は覚せい剤入りのチョコレートの生産に従事させられていた。戦後、在日朝鮮人が覚せい剤を密造していたのは生活の資を得るためだった。覚せい剤は「ダメ。ゼッタイ。」という標語だけで済ますのではなく、その背後にある社会問題を認識することが重要であることを、本書は教えてくれる。
佐々木 研一朗・政治経済学部兼任講師
(著者は政治経済学部教授)