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文学部・音楽家の大友良英氏を招き「即興と社会」講演会

参加者との即興セッションも行われた 「即興」をキーワードに社会を考える大友氏

文学部は11月30日、音楽家の大友良英氏を招いた講演会「即興と社会—震災後に生まれつつある新しい祭りをテーマに—」を駿河台キャンパス・アカデミーホールで開催した。

大友氏は、NHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」や2019年の大河ドラマ「いだてん」の音楽制作をはじめテレビや映画の分野で活躍する一方、「フェスティバル Fukushima!」や「札幌国際映画祭」など一般参加型のプロジェクトやプロデュースも多数手がける音楽家。

合田正人文学部長のあいさつで始まった講演会ではまず、さまざまなレコードを掛けながら同氏が音楽を志したきっかけや即興演奏のルーツについて解説。さらに、西洋で生まれたオーケストラとアメリカ発祥のジャズを比較し「音楽の中に社会の縮図を見ることができる」と説いた。

続いて、東日本大震災の発生以後、福島のために何かできないかとの思いで立ち上げた「プロジェクトFukushima!」の活動について話題を展開。プロアマ問わず、福島の人も含めて楽器を持ち寄って集まった人たちが即興で一つの音楽をつくるフェスティバルを提案した大友氏は、当時の映像を振り返りながら「初めて会った人同士の共通項を見つけながら音楽を作る。そこで生まれたものは集団のアイデンティティを形成するものになった」と即興の可能性について言及。講演会の参加者による即興セッションも行われた。

さらに即興と社会の関係については「日常に即興を持ち込むといろいろと迷惑がかかる一方で、マニュアル化が進み、規制がかかりすぎてしまう」と述べ、「世界は自分たちの知っている世界だけで成り立っているわけでなない。即興音楽は自分のいる世界以外の世界があることを教えてくれる」と、今までにないもの、前例にとらわれないものの有用性について持論を述べた。その後の質疑応答も活発に行われるなど、新しい視点を示してくれる意義深い講演会となった。