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本棚『山崎今朝弥——弁護士にして雑誌道楽』山泉 進/村上 一博 編著 論創社、2,800円+税



山崎今朝弥について書かれた本では46年ぶりで二番目になる。1972年の森長英三郎『山崎今朝彌』(紀伊国屋書店)が嚆矢である。これを超えるのは至難の技とされてきた。評伝的資料の後付けの困難さや、山崎が行った雑誌出版活動の実態把握の困難さなどがその理由である。第一の困難は、遺族からの資料提供があったことで、第二の困難は、明治大学史資料センターに設置された明治大学「人権派弁護士研究会」における研究活動の成果があったことで、乗り越えが可能となって46年ぶりの快挙となった。

中でも際立ったこの書の成果は、「山崎式分離統合編輯法」と山崎自ら称した「解放」を初めとした雑誌発行の実態を、「書誌学」的手法により浮かび上がらせた点である。何が浮かび上がるか。検閲と発禁を繰り返した国家権力に対する表現の自由を求める山崎の凄まじい闘いぶりが浮かび上がる。実は「道楽」などではない。縊られて死んだ知己・伝次郎幸徳秋水への深い自責の念が、山崎を闘わせた。授業のテキストとしてはどのように展開されるか、ぜひ聴講してみたいものだ。

吉田 悦志・国際日本学部教授
(編著者は名誉教授/法学部教授)