新入生の皆さん、このたびはご入学、誠におめでとうございます。新しく明治大学の仲間となる皆さんを、心より歓迎いたします。また、これまで新入生を支えてこられたご家族やご列席の皆さまに対しましても、篤くお慶びを申し上げます。
さて、明治大学は、1881年に志高き20代後半の3人の若者により創立されました。当時の日本は、封建社会であった江戸時代が終焉し、社会構造が大きく変化した激動の時代でありました。西欧諸国をモデルにした日本の近代化が急務である中、フランス法を学んだ岸本辰雄先生、宮城浩蔵先生、矢代操先生が、近代化に不可欠な「法学」を日本に普及させ、新しい世を作らんと学校をつくりました。それが明治法律学校であり、現在の明治大学であります。
本学は、これまで約56万人の卒業生を輩出しましたが、開校当時の熱き想いは「権利自由」「独立自治」の建学の精神として、現在まで脈々と受け継がれています。明治大学の校歌には、そうした建学の精神や気風が溢れていますので、皆さんも是非覚えて、歌い継いでください。
ところで、目下、日本では少子高齢化に歯止めがかからず、総人口も減少局面を迎えていますが、世界に目を転じますと、その人口は現在の76億人から、2050年には98億人へ増加すると予測されています。この人口爆発ともいえる状況により、地球温暖化などの環境問題に加え、水や食糧、エネルギーなどの資源問題もさらに深刻さを増してゆくことでしょう。一方、世界人口の半数を擁するアジアでは、人々の生み出すダイナミズムが更なる経済成長をもたらし、世界全体のGDPに占めるアジアの割合が、現在の30%台から2050年には50%を超えて「アジアの世紀」が到来するといわれます。こうした変化も相まって、私達は地球市民の一員として、国を超えて互いに多様な繋がりを築き、協同してゆく時代へと向かっているのです。
そうしたグローバルな流れが加速する時代を生きる皆さんに紹介したいのは、米国出身の日本文学研究の第一人者であるコロンビア大学名誉教授のドナルド・キーン博士であります。博士は、新元号「令和」の典拠になった『万葉集』を「日本最古の歌集であると同時に、日本最高の歌集である」と讃えていたように、我が国の古典文学にも造詣が深く、多くの著書を通じて日本と世界の架け橋となり、日本文化全般を海外へと広めました。近年では東日本大震災後に被災地の人々が支え合う姿を見て「日本人とともに生きたい」と日本国籍も得て永住し、この2月に96歳の天寿を全うされました。そもそも博士が日本文学への道を志したのは、皆さんとちょうど同じ年頃、偶然手にした『源氏物語』がきっかけでした。日本文学が世界であまり知られていなかった当時、彼はその魅力に惹かれ、古典文学を読みたい一心で日本語の勉強に取り組みました。しかし、学びを深めるにつれ、日本人とはどういう人達なのか、その作品を育んだ国や国民性そのものも理解したいと、言語習得の域を越えて一気に探究心を膨らませていったのです。本日入学される皆さんも、世界へと視野を広げる中で、本学で語学をはじめとするグローバルスキルを磨いて、それぞれの領域で専門性を高めていくことはもちろんのこと、相手の文化や歴史、価値観や社会環境にも興味を持つというグローバルマインドを、一段と高めていってほしいと強く願っています。
あわせて、そうした成長を目指す際に欠くことのできない点、それは「自国の理解」であります。折しもキーン博士は「現代の日本人は自国の伝統文化に関心を持たなくなっている」と警鐘を鳴らしていましたが、他者の歴史や文化を理解することと同様に自国のそれを理解することは、世界を渡り歩くための、いわば車の両輪といえます。お互いが相手のバックボーンをよく理解して、はじめて真のグローバル化への道が開かれるのです。入学を機に、今一度自分が根差している原点を見つめ直し、異文化への扉を開いていってください。
そして同時に「個の確立」を目指すことも忘れてはなりません。自律した人間として他者と渡り合うには「individual」すなわち「個」の確立が不可欠です。本学では「『個』を強くする大学」という理念を掲げていますが、この「個」を強めるというのは、主体性をもって自ら「考える材料」を発見し、そして「自分で考え抜く力」を磨き続けることにあります。卒業までにしか経験できないことや挑戦できないことは、たくさんあります。困難に直面しても、強い信念と情熱をもって、挫けず「前へ」と進んでゆく。そうした不屈の明治魂も、本学らしい「個」のひとつであります。本学で新たに出会う仲間と切磋琢磨をして、皆さんそれぞれにふさわしい「個」の確立を目指してほしいと、切に願っています。
結びになりますが、皆さんが本学での学びを最大限に活用し、高度な専門性と国際通用性に磨きをかけて、かつ、人間性豊かに成長を遂げられますことを祈念いたし、お祝いの言葉といたします。
さて、明治大学は、1881年に志高き20代後半の3人の若者により創立されました。当時の日本は、封建社会であった江戸時代が終焉し、社会構造が大きく変化した激動の時代でありました。西欧諸国をモデルにした日本の近代化が急務である中、フランス法を学んだ岸本辰雄先生、宮城浩蔵先生、矢代操先生が、近代化に不可欠な「法学」を日本に普及させ、新しい世を作らんと学校をつくりました。それが明治法律学校であり、現在の明治大学であります。
本学は、これまで約56万人の卒業生を輩出しましたが、開校当時の熱き想いは「権利自由」「独立自治」の建学の精神として、現在まで脈々と受け継がれています。明治大学の校歌には、そうした建学の精神や気風が溢れていますので、皆さんも是非覚えて、歌い継いでください。
ところで、目下、日本では少子高齢化に歯止めがかからず、総人口も減少局面を迎えていますが、世界に目を転じますと、その人口は現在の76億人から、2050年には98億人へ増加すると予測されています。この人口爆発ともいえる状況により、地球温暖化などの環境問題に加え、水や食糧、エネルギーなどの資源問題もさらに深刻さを増してゆくことでしょう。一方、世界人口の半数を擁するアジアでは、人々の生み出すダイナミズムが更なる経済成長をもたらし、世界全体のGDPに占めるアジアの割合が、現在の30%台から2050年には50%を超えて「アジアの世紀」が到来するといわれます。こうした変化も相まって、私達は地球市民の一員として、国を超えて互いに多様な繋がりを築き、協同してゆく時代へと向かっているのです。
そうしたグローバルな流れが加速する時代を生きる皆さんに紹介したいのは、米国出身の日本文学研究の第一人者であるコロンビア大学名誉教授のドナルド・キーン博士であります。博士は、新元号「令和」の典拠になった『万葉集』を「日本最古の歌集であると同時に、日本最高の歌集である」と讃えていたように、我が国の古典文学にも造詣が深く、多くの著書を通じて日本と世界の架け橋となり、日本文化全般を海外へと広めました。近年では東日本大震災後に被災地の人々が支え合う姿を見て「日本人とともに生きたい」と日本国籍も得て永住し、この2月に96歳の天寿を全うされました。そもそも博士が日本文学への道を志したのは、皆さんとちょうど同じ年頃、偶然手にした『源氏物語』がきっかけでした。日本文学が世界であまり知られていなかった当時、彼はその魅力に惹かれ、古典文学を読みたい一心で日本語の勉強に取り組みました。しかし、学びを深めるにつれ、日本人とはどういう人達なのか、その作品を育んだ国や国民性そのものも理解したいと、言語習得の域を越えて一気に探究心を膨らませていったのです。本日入学される皆さんも、世界へと視野を広げる中で、本学で語学をはじめとするグローバルスキルを磨いて、それぞれの領域で専門性を高めていくことはもちろんのこと、相手の文化や歴史、価値観や社会環境にも興味を持つというグローバルマインドを、一段と高めていってほしいと強く願っています。
あわせて、そうした成長を目指す際に欠くことのできない点、それは「自国の理解」であります。折しもキーン博士は「現代の日本人は自国の伝統文化に関心を持たなくなっている」と警鐘を鳴らしていましたが、他者の歴史や文化を理解することと同様に自国のそれを理解することは、世界を渡り歩くための、いわば車の両輪といえます。お互いが相手のバックボーンをよく理解して、はじめて真のグローバル化への道が開かれるのです。入学を機に、今一度自分が根差している原点を見つめ直し、異文化への扉を開いていってください。
そして同時に「個の確立」を目指すことも忘れてはなりません。自律した人間として他者と渡り合うには「individual」すなわち「個」の確立が不可欠です。本学では「『個』を強くする大学」という理念を掲げていますが、この「個」を強めるというのは、主体性をもって自ら「考える材料」を発見し、そして「自分で考え抜く力」を磨き続けることにあります。卒業までにしか経験できないことや挑戦できないことは、たくさんあります。困難に直面しても、強い信念と情熱をもって、挫けず「前へ」と進んでゆく。そうした不屈の明治魂も、本学らしい「個」のひとつであります。本学で新たに出会う仲間と切磋琢磨をして、皆さんそれぞれにふさわしい「個」の確立を目指してほしいと、切に願っています。
結びになりますが、皆さんが本学での学びを最大限に活用し、高度な専門性と国際通用性に磨きをかけて、かつ、人間性豊かに成長を遂げられますことを祈念いたし、お祝いの言葉といたします。
2019年度 入学者数
学 部 | |
---|---|
法学部 | 870 |
商学部 | 1,080 |
政治経済学部 | 1,212 |
文学部 | 865 |
理工学部 | 1,066 |
農学部 | 602 |
経営学部 | 603 |
情報コミュニケーション学部 | 503 |
国際日本学部 | 361 |
総合数理学部 | 289 |
学 部 計 | 7,451 |
大 学 院 | 博士前期 | 博士後期 |
---|---|---|
法学研究科 | 12 | 2 |
商学研究科 | 27 | 4 |
政治経済学研究科 | 47 | 4 |
経営学研究科 | 45 | 5 |
文学研究科 | 54 | 9 |
理工学研究科 | 298 | 8 |
農学研究科 | 72 | 4 |
情報コミュニケーション研究科 | 21 | 2 |
教養デザイン研究科 | 23 | 3 |
先端数理科学研究科 | 60 | 6 |
国際日本学研究科 | 15 | 3 |
グローバル・ガバナンス研究科 | — | 0 |
大 学 院 計 | 674 | 50 |
専 門 職 大 学 院 | |
---|---|
ガバナンス研究科 | 24 |
グローバル・ビジネス研究科 | 68 |
会計専門職研究科 | 73 |
法務研究科(法科大学院) | 48 |
専 門 職 大 学 院 計 | 213 |
総 計 | 8,388 |
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