Go Forward

例年春先はスーツに身を包んだ学生が就職活動に懸命である。学生の一人が授業を前にして語った。大学での4年間は一体何だったのだろうかという。今まで大学で勉強してきたこととは無関係な「就活」に追いまくられ、必修の卒業論文に十分な時間が割けないという嘆きである。この言葉は教員として胸に突き刺さっている。

先日、父が死去した。平凡な人生だったが勉強をしたいという気持ちを強く持っていた。しかし、大正や昭和初年生まれの貧しい家に生まれ育った者がそうであったように、大学へ通うことができなかった。また、大学の恩師は戦況悪化打開のための早期卒業により大学を3年半で終えざるを得なかった。ともに社会の状況が彼らの勉強をしたいという希望を潰していた。筆者の小学校時代の同級生の中にも、家庭環境から高校進学を断念せざるを得ない者がいた。

平成・令和と社会は大きく変わったはずなのに、学問への意欲を削ぐ状況は現在もある。それを打破する方法はないのだろうか。大学は学問への夢や情熱を傾けるところであってほしいものだ。