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論壇「大学入試改革の3つの懸念」

副学長(入試改革担当) 牛丸 元

現行のセンター試験の後継として、2021年1月より大学入学共通テスト(以下、新テスト)が実施される。これにより、実際の大学入試改革が始まる。その骨子は、「学力の3要素」や「英語4技能」を測定する入試を行うこと、それに合わせ「3ポリシー」を見直すことである。私立大学では、昨年5月に早稲田大学の3学部が、新テストを活用した大胆な入試改革を発表した。一方、本学は他大学と歩調を合わせながら徐々に改革を進める方針である。これは、大学入試改革に対して次のような懸念点・疑問点があるためである。

第一は、21年から導入される新テストの実施大綱が、実施2年前を切った現時点においても公表されていないことである。新テストでは国語と数学で記述式が課されることから、成績提供が現行より1週間程度遅れる。来年のセンター試験の日程に基づけば、成績提供日は2月15日前後になる。この場合、複数の学部が一般試験の合格判定を終えていることになる。大綱発表が遅れるほど、入試スケジュールの作成が遅れ、新テストを活用した効果的な入試改革も遅れることになる。

第二は、新テストの記述式問題に対してである。「思考力」等を測定するため、国語と数学において記述式が導入される。問題は国語である。50万人以上の解答を1万人で採点するようだが、正確性・公平性は担保されるのであろうか。また、第2回プレテストでは、受験生の自己採点と実際の得点との乖離が大きいという結果となった。得点を誤って見積もった受験生が数多く受験することは、学生にとっても大学にとっても不幸である。このことから、本学は国語の記述式の取り扱いについては慎重に検討中である。また、英語4技能試験については、3年次に受験した2回の試験成績のみが成績提供システムから送られることになった。本学はすでに一般入試で4技能試験を導入しているが、重複処理などの問題もあり、21年の導入は見送った。

第三は、「学力の3要素」をバランスよく測定することの困難性である。特に「主体性」等の測定については、本学をはじめどの大学も、出願時にWeb上で高校時代の経験等を記入させるに留まっており、入試判定に利用するものはまれである。私立大学はすでに特別入試という形で、学生数のほぼ半数を多様な個性と能力の学生を受け入れている。これ以上多様な人材を受け入れる必要があるだろうか。多様性は大学がコントロールできる範囲内に収めるべきである。

最後に3ポリシーの見直しについては疑問が残る。本来は、3ポリシーに基づいて、入試制度が作られるものである。入試を変えるから3ポリシーを変えなさいというのは、本末転倒である。動向を見極め慎重に対応したい。
(経営学部教授)