Go Forward

第587回 明大スポーツ新聞部 ズームアップ

文・楠大輝(政経3)/写真・坂田和徳(商3)

覚醒した大器 恩返しの一発 硬式野球部 和田 慎吾



高々と上がった打球がきれいな放物線を描いた。春季リーグ早大2回戦、4回表の攻撃。左翼席中段で跳ねる白球を見ながら和田慎吾外野手(商4=常総学院)はゆっくりとダイヤモンドを1周した。同点の2点本塁打。歓喜のベンチに戻ると善波達也監督とグータッチ。交わした拳にはどんな思いが込められていただろうか。

和田は茨城の名門・常総学院高出身。身長187センチの堂々とした体格から繰り出すパワフルなスイングで、3年次春の甲子園では本塁打を放った。そのあふれんばかりのポテンシャルは大学入学早々、指揮官の目に留まる。1年次春からベンチ入りを果たすと、初スタメンの早大戦で3安打3打点を記録。突如現れた新星に神宮球場は沸いた。

しかし1年次秋から3年終了までに放った安打はわずかに2本。「悔いしか残っていない」。チームも4季連続で優勝を逃すなど、もどかしい日々が続いた。

それでも腐ることなくバットを振り続ける。ウエートトレーニングにも力を入れ、体重は87キロから94キロに増加。一番の武器である長打力に磨きをかけ、ひたすらに陽の当たる日を待った。善波監督も「(和田は)真面目。熱心に練習をやっている」とその姿勢を高く評価。結果が出なくても粘り強く起用を続けた。

そして飛び出た待望の一発。和田が「応援してくれる人のために打てて良かった」と言えば、指揮官は「グータッチじゃなくて、グーパンチしたいくらいだったよ(笑)」と冗談交じりに、値千金の一打を称えた。

和田は同試合で8回にも逆転の3点本塁打を放ち、勝利の立役者となった。1日にして神宮のヒーローへと戻った右の大砲。「これからも一戦一戦全力で戦う」。つかんだ感覚はもう二度と離さない。


(わだ・しんご 商4 常総学院 187cm・94kg)