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本棚 境界性 その内と外—日本基層社会の「境界性」に関する総合的研究—大胡 修 編著 (時潮社、4,500円+税)



「境界」は、私たちの生活の至る所に存在している。海外に出かける時は国境を意識し、引っ越しをする時には自治体の境界を認識する。そして、地理的な境界のみならず、「何かと何かを何らかの方法で分けるための基準」も境界(分類)である。「境界性」の研究とは、そうした様々な境界の性質や性格を明らかにし、そこから生じるさまざまな境界をめぐる具体的な問題を解き明かす試みであろう。

本書は、フィールドワークを通じて、さまざまな境界の存在や意味を明らかにするために取り組まれたもので、「日本基層社会の境界性に関する総合的研究」(社会科学研究所)の成果物である。本書の特徴の1つは、参加した共同研究者の研究分野は、文化人類学、法社会学、家族社会学など多岐にわたっており、ボーダーレス社会といわれる中で、それぞれの分野からするどく「境界性」に切り込んでいることであろう。また、それぞれのフィールドから、具体的な事象に言及し、境界の意味を整理・豊富化させている。境界のさまざまな意味を問い直す一冊である。


牛山 久仁彦・政治経済学部教授(編著者は名誉教授)