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論壇「日本版NCAA、大学スポーツ協会と本学のスポーツ振興について」 副学長(スポーツ振興担当) 若林 幸男

本年3月1日に全米大学体育協会(NCAA)の日本版を目指すという組織、「大学スポーツ協会」(呼称、UNIVAS)が一般社団法人として発足した。数年前から文科省・スポーツ庁が強いイニシアティブで牽引してきたものであり、初代会長には、早稲田の前総長、鎌田薫氏が就任した。その設立趣旨は、①大学スポーツ選手の修学支援、②安心安全のガイドライン策定などの学生への支援、そして③大学スポーツ自体のブランディング、収益化を伴うプロモーションということである。参加大学は今200校を超え、30の競技団体もそこに入り、当初の目標をクリアしつつあるという。

日本の学校スポーツ界は学生とOB、OGの自主的な活動として、いわば自助的な発展を遂げてきた。先輩・後輩関係を通じて人間性の成長が見込まれる一方で、日大アメフト部で昨年起こったような問題に象徴されるように、種々のガバナンスの問題が生起しやすい状態であったといえよう。また、大会の主催者である大学競技連盟(学連)からの影響力も大きく、運動部間での多様性が大きかった。

このような諸問題に対しては、大学組織と体育会各部の関係を整理する努力を行うとともに、学連やマスコミに対しては、大学横断的な組織(手本はNCAA)によって一括した対応を図ることはきわめて有効であり、喫緊の課題でもあった。

しかしながら、このUNIVASに対する評価は決して高いものばかりではない。たとえばアメリカの場合、競技大会の主催者はNCAAで、これにより収益化についても実行力を持つのに対して、日本では従来からの主催者、学連がUNIVAS参加の各大学と同じレベルで顔を並べることになってしまい、利益相反的状況となっている。また、UNIVASの掲げる修学支援やガイドラインは外部の中央組織ではなく、本来は大学が独自の3ポリシーからあらためて設定すべき問題でもある。大学スポーツ組織の改革で先んじているといわれている筑波大は不参加を表明し、さらに、やはり大学独自の単位取得基準(これを満たさないと試合出場を認めない)等を導入した京大・関学大も今回、UNIVASへの参加を見送っている。

本学も副学長とスポーツ振興事務室を中心に、当該協会の設立準備委員会発足とともに参加し、慎重にその加盟の可否を検討するとともに、本学のスポーツ関連組織全体の見直しを行ってきた。拙速を避けるために、今年の3月のUNIVAS参加は見送り、本学のスポーツ推進体制の抜本的な改革を優先させ、大学としてガバナンスや修学支援体制の整備を進めてきた。現在設立準備を進めている新たな組織「明治大学スポーツ推進本部」体制下で、大学としての明確なスポーツ支援プログラムを立ち上げながら、UNIVASが全大学にとって「真に有効」な組織となるよう必要な要望を適宜行う予定である。(商学部教授)