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第588回 明大スポーツ新聞部 ズームアップ

文・写真/福永 智隆(政経3)

悔しさ糧に 1年分のガッツポーズ 卓球部 菅沼 湧輝



チームに試練が訪れた。リーグ6戦目の早大戦。全勝対決となった一番はもつれ、3—3で最終7番手に。相手は、早大の主将。明大は今季でリーグ戦初出場を飾った菅沼湧輝(営2=大阪桐蔭)がコートに立った。

「もう駄目かと腹をくくった」(髙山幸信監督)。その言葉通り、試合は常に劣勢。点を取っても、実績で勝る相手が地力を見せる。第5ゲームは、マッチポイントを握られる崖っぷちに。それでも「負ける気がしなかった」。攻めの姿勢を決して崩さない。ピンチを何度も何度もはね返した。

1年間の悔しさがあった。昨秋のリーグ戦。優勝を決めたのは寮で同部屋の西康洋(商2=明徳義塾)だった。出雲卓斗(政経2=遊学館)、沼村斉弥(商2=野田学園)もルーキーながら主軸に定着。そんな同期の活躍をベンチで眺めていた。「本当に悔しかった。自分が出ていたら……」。中学生の頃から憧れだった明大。〝このチームで活躍したい〟。その思いがかなわず、やり切れない自分がいた。

それでも芯はぶれなかった。「努力しないと絶対勝てない」。卓球を始めたときから変わらない信条。ほぼ毎日ラケットを握った。腐らず、強い自分を求め続けた。

その努力は全員に届いていた。「みんなが頑張ってきたことを知っている。だから、菅沼で負けたら仕方がない」(髙山監督)。指揮官はいつでも背中を押してくれた。ベンチは菅沼を信じて相手の何倍も声を出し続けた。

逆境を乗り越え、迎えたフルゲームマッチポイント。最後のポイントを決めると、大きくそり返り吠えた。そして、何度も拳を握った。「ここまで無駄じゃなかった。1年分のガッツポーズだった」。最終戦にも勝利し、2年連続22度目の優勝を飾った卓球部。努力の天才が、新たな1ページに激闘の記憶を添えた。

(すがぬま・ゆうき 営2 大阪桐蔭 169cm・59kg)