本棚 自動運転と社会変革—法と保険 明治大学自動運転社会総合研究所 監修 中山幸二・中林真理子・栁川鋭士・柴山将一 編著（商事法務、3,000円＋税）

本書は、明治大学自動運転社会総合研究所が総力を挙げてその研究成果の一部を取りまとめた研究書である。

自動運転車の開発の進捗は加速度的であり、数年内には実用化されると期待される。自動運転車が普及すれば、様々なメリットが人類にもたらされ、日本社会に限れば、その直面する喫緊の課題である少子高齢化社会の様々な問題に解決策をもたらすことも期待される。反面、ハッキングやテロ、バグや故障などで、巨大なリスクが社会にもたらされる可能性も指摘されている。20世紀のモータリゼーションがもたらした便益と交通事故の悲劇と比肩しうる、あるいはそれを遥かに凌駕する便益とリスクが発生するかもしれない。

自動運転車に内在する便益を最大限実現しつつ開発と実用化を進め、やはりそこに内在する様々なリスクを極小化するには、効率的で公正な法規制と、リスクに備えた補償制度と保険制度が不可欠である。

本書は、このような自動運転の社会課題について、網羅的かつ緻密に検討を行っており、これからの議論と政策決定の際に必ず参照されるべき基本書と位置づけられる。