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本棚 経営史学の方法—ポスト・チャンドラー・モデルを求めて 安部 悦生 著(ミネルヴァ書房、3,500円+税)



独自の領域と方法を確立していたかに見えていた「経営史学」の有効性が問われている。ケースメソッドを多用して経営者研修を行っていた時代から、今や、経営学部において経営史という課目配置を見送る時代に移りつつあるとする観察もある。本書はここ数年間、経営史学会の全国大会においてシリーズで安部先生が報告した議論(多くの先生が詰めかけ、常に立ち見になり、筆者も聞き洩らした回もあった)を中心に編まれている。主な検討の対象は、チャンドラーモデルの「戦略と組織」、国際化の検討、文化論的考察、そして進化学的アプローチ(ダーウィン以降)の4つであるが、安部先生の企業進化論、企業進化学として経営史学を位置付ける議論は明快である。戦後経済学領域における1つの研究潮流として分化された「経営史学のレゾンデートル」の再発見にとって、本書の資するところはきわめて大きなものとなることは間違いない。
若林幸男・商学部教授(著者は経営学部教授)