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論壇 少子社会における付属校の存在 明治大学付属明治高等学校・中学校 校長 安藏 伸治

第1次ベビーブームと言われた1949年の出生数は270万人、第2次ベビーブームの1973年が209万人、そしてその後の少子化により2016年に100万人を割り込み、今年の出生数は80万台まで急減する。第1次ベビーブーム世代の3割の出生数しかない社会を迎えることになる。大学進学率が伸びたとしても、本学に入学してくる学生のレベルは確実に低下してしまう。そのような時代に、明治大学はどのように優秀な人材を確保していくのであろうか。

そうした中で、大学における付属校の位置付けを考えてみたい。一般的に付属校は中学や高校で入学すれば、大学受験を経験せずに進学できるエスカレーターのような学校と思われがちである。

明治高校は約10年前に教育改革に着手し、各学部や理事会が求める人材の育成に取り組んできた。週34時間の決められた授業枠組みの中でのカリキュラム改革は、学部以上の議論と時間が必要であった。さらにその改革を通じ、よりレベルの高い卒業生を輩出するには、全教員の改革に対する納得と教育の実践、不断の努力の決心が必要であった。

明治大学には、さまざまな入試形態や異なる受験科目で1万人近くの新入生が多様な高校から入学してくる。指定校推薦やスポーツ推薦、その他AO入試など、面接試問のみで多くが入学する。また、一般入試は3教科のみの試験、大学によっては2科目入試を行っているところもある。

こうした入試で大学に入学してくる学生と比較すると、明治高校では高校2年まで全員が全科目を必修として学習する。高校3年で文理に初めて分かれるが、文系でも数学があり、理系でも社会を履修する。中等教育での多数科目の学習は、しっかりとした基礎力の育成に役立ち、大学進学後やその後の人生で大きな差を生み出す。

明治高校から大学へは、英検2級の合格とTOEIC450点以上の取得、高校1年の1学期から高校3年の2学期期末試験までの総点の6割を取得しなくては推薦されない。今年の高3生は、6月の英検で260人全員が2級に合格し、1割強が準1級に合格している。

明治大学に進学後、海外協定校に多数が留学し、毎年複数の学部の卒業生総代や成績優秀者を輩出、10名強が公認会計士試験に学部在学中に合格している。国家公務員総合職にも多数が合格、今年は明治高校卒の初となる女性の国家官僚が誕生、また、女性初の体育会本部委員長を明治高校OGが務めた。

今後の少子社会で、本学が優秀な人材を確保するためには、高度な中等教育の実践を行うことができる付属校の充実と拡充が、入学生の質と量の確保と同時に、「明治愛」醸成のためにとても大切なことと思う。 (政治経済学部教授)