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論壇 社会変化と高等教育 —明治大学の到達点は? 監事 佐藤 健

18歳人口は、2019年の118万人が、2040年には約25%減少して88万人になると予想され、一方で大学進学者数は、2019年の58万人が、2040年には51万人に減ると推計されている(文部科学省)。このような将来的少子化とそれに伴う大学進学者数の減少傾向により、今後一層の高等教育の在り方が問われることになる。2017年に生まれた者が大学を卒業する2040年の社会は、「人生100年時代の常態化」、「高度なグローバル化の進展」、「Society5.0への突入(超スマート社会)」、「SDGs達成により多くの人が平和と豊かさを享受できる社会」等、大きく今の社会とは違ったものになっているはずである。

こうした社会に適応可能な人材育成や、イノベーション創出の基盤となる大学改革は、今の高等教育機関にとって急務であり、文部科学省が今後進める高等教育・研究改革の一体的推進政策として2019年2月1日柴山前文部科学省大臣の「柴山イニシアティブ」として公表されている。後任の現萩生田大臣(1987年商学部卒)も踏襲するものと思われる。

上述の少子化進展による大学進学者数の減少をできるだけ抑え、高度化社会に対応可能な若者の育成のために、国は、「国の責任において」意欲ある若者の高等教育機関への進学機会を後押し(確保)しようという高等教育無償化政策を実施する。具体的には、授業料・入学金の減免や給付型奨学金の支給を、低所得者世帯の若者に対して本年4月より実施するものである。国のこうした「手厚い支援」は、教育の質保証・情報公表のための仕組み構築や、教育体制の多様化・柔軟化政策としても具体化される。また、ガバナンス改革等「改革」に意欲ある大学への重点支援策や産学連携(外部資金獲得)の推進にも具現化される。

このような「手厚い支援」の一方で、今まで以上に国(文部科学省)としては、「厳格な評価」を徹底していくことを明治大学としても忘れてはならない。例えば、授業料の減免や奨学金支給を受けた学生には、今まで以上に進学後の学習状況についてチェックを行い、受給条件に満たない学生には支援を打ち切ったり、また、「教育の質」を保証できない大学は、国は撤退も考えさせ、単独で改革が行えない大学は「再編・統合・撤退」を徹底させる方向でいる。すなわち、国として「手厚い支援」はするものの、「厳格な評価」も徹底させ、「教育・研究・ガバナンス」改革を加速化させたいわけである。

明治大学は、こうした文科省の意図を汲み取る一方で、近未来社会に向けた高等教育機関として、生き残り可能(Survivable)であることは当然ながら、持続可能で発展的(Sustainable and Productive)な大学として、独自の方策も模索・検討・導入し、「最前線で活躍する研究者」や「次代を担う学生」を育成し続け、結果的に自らを「地域や専門分野をリードしていく大学」、そして「世界を牽引するトップ大学」として成長させるべきであろう。