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祝辞 卒業後も、たゆまぬ学びと実践を

理事長 柳谷 孝

このたびの新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、卒業式で皆さんに直接ご祝辞を申し上げることが叶いませんが、一言お祝いを申し上げます。卒業ならびに修了を迎えられる皆さん、このたびは誠におめでとうございます。また、ご家族の皆さまにも心よりお慶びを申し上げますとともに、本学への多大なるご理解とご支援に対し、厚く御礼を申し上げます。皆さんは「権利自由・独立自治」の建学の精神の下、多くの学びや出会いを経験したことでしょう。長い歴史と伝統を有する明治大学の卒業生であることの誇りを胸に、これからの人生を堂々と歩んでいってください。

ところで、私たちは今、後の歴史に問われるであろう大きな転換期に差し掛かっています。現下の世界情勢に目を向けますと、長期化する米中の覇権争いや英国のEU離脱問題等により地政学的リスクが高まる一方で、収束の見えない新型肺炎の拡大などにより、世界の先行きに不透明感が増しています。

他方、私たちの日常に目を向けますと、「ソサエティ5.0」に代表されますように、「5G」や「IoT」など情報技術を巡る環境変化に注目が集まっています。人工知能(AI)をはじめとする技術革新が一段と加速する中、多くの情報資産と新たなデジタル技術を活用する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」により、今後短期間のうちに私達の生活のみならず、社会構造にも大きな変革をもたらすと言われています。

このような未来予測が困難な時代においては、過去の成功体験が瞬時に時代遅れとなるDisruption(破壊)の波が押し寄せることにより、私達のこれまでの常識が通用せず、不確かな状況下で自らの行動を選択してゆく場面が一段と増えてゆくことでしょう。

そうした時代へと向かう皆さんには、これからも主体性をもって自ら「考える材料」を発見し、そして「自分で考え抜く力」を磨き続けることはもちろんですが、あらゆる知識や情報を組み合わせて、実社会のさまざまな難題に、新たな「解」を創造できるかが一層問われてきます。これに関連し、ドイツの文豪であるゲーテは、次の言葉を残しています。

Knowing is not enough; we must apply.
 Willing is not enough; we must do.

(知っているだけでは不十分、それを活用しなければならない。
やる気だけでは不十分、それを実行しなければならない。)

本学で培った学びや経験は、卒業で完結するのではありません。卒業後も学び、経験も重ね、そして社会で生かしていくことで、その真価が最も発揮されるのです。未来の担い手である皆さんには、多様な人々と協同し、その叡智を結集させ、課題解決に向けた実践力を高め続けていくことに期待を致しております。

さて、この4月からは、皆さんの多くが新社会人として新たな世界へと羽ばたきます。新社会人とは、新しく社会をつくる人のことです。社会は一人ひとりでできています。その一人ひとりが踏み出すことで、初めて社会は動き出します。そして一人ひとりが学び得たことを実践し続けることで、新しい社会ができてゆくのです。これからも、不屈の明治魂を胸に失敗を恐れず挑戦し続け、未来を創造してゆく気概と勇気をもって、時代を切り拓いていってください。そして、地球市民の一員として、国や人種の違いを超えて協調できる世界を希求するとともに、人類と地球環境との調和した未来を創造することに、皆さん一人ひとりが貢献してほしいと願っています。

このたびの卒業に際し、皆さんの前途に幸多きことを心より祈念いたし、祝辞といたします。