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論壇「全国型総合大学にとっての奨学金制度」

学務担当常勤理事 鈴木 利大

私の学生時代は1960年代後半から70年代初頭ですが、当時大学内で至る所からいろいろな地域の方言が聞かれました。学生のほぼ半分が地方出身者であったと思います。私は生まれも育ちも東京でしたので、さまざまな地域から来た学生と付き合うことがとても新鮮で、物の考え方、行動パターンなど非常に勉強になりました。全国型総合大学であり、私学の雄である明治大学に入学したことを非常に誇りにしていました。昨今では首都圏からの入学者が70%を超え、地方からの学生は大幅に減少しており、方言を聞くこともほとんどなくなりました。もちろん、今の学生諸君は多くの通信媒体の進化により、きれいな標準語をしゃべっていることも方言を聞かなくなった原因かもしれませんが、地方からの学生が減少していることは全国型総合大学にとって重要な問題です。

地方から東京の大学に進学する際の大きな問題は財政的問題です。平均的に自宅通学生に比べて自宅外通学生の1年間の生活費は150万円ほど高くなっています。これに授業料などを加えると300万円ほどになり、保護者の皆さんの経済的負担は大変だと思います。明治大学ではこの負担を軽減するために、奨学金制度を充実させています。本学の奨学金制度は、明治大学への入学を希望する学業成績優秀でありながらも、経済的に困窮している学生に入学時および入学後の経済的支援を行うことを目的としています。

従来の奨学金は貸与型で卒業時に多額の債務が発生し、卒業と同時に重い債務返済に苦しんでいました。この状況に対して、本学の奨学金制度は他大学より早く貸与型奨学金から給付型奨学金に変更しました。加えて、新たな奨学金制度を立ち上げ、地方からの学生に学費の負担を軽減するよう努めています。その奨学金制度は本年4月から開始される「おゝ明治奨学金」で、一般入学試験出願前に本奨学金を申請し、選考の上、採用候補者として決定。一般入学試験合格後、入学手続時に納入する入学諸費用から授業料年額2分の1を減額するものです。

また、在学生を対象とした「未来サポーター給費奨学金」、そして、この他に校友会が地方出身者向けに立ち上げた「『つなげ!紫紺の“たすき”』奨学金」、連合父母会が行っている「明治大学連合父母会一般給付奨学金」、さらに「明治大学外国留学奨励助成金」、「海外トップユニバーシティ留学奨励助成金」、「国際化サポート海外留学奨励金」など留学関係に関しても手厚い支援を行っています。国内はもちろん世界各国から優秀な学生が明治大学で学ぶための場を設定するためにもさらなる奨学金制度の充実が必要です。(政治経済学部教授)