Go Forward

告辞—混乱の中にも次の時代を開く鍵がある

学長 大六野 耕作

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員を代表して心よりお祝いを申し上げます。皆さんに直接お会いし、お祝いを申し上げられないことは誠に残念ですが、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症の「パンデミック」を宣言し、その終息時期も未だ見通せない状況では、新入生とそのご家族の感染防止を優先せざるをえませんでした。入学式を心待ちにされていた皆さんのお気持ちを考えると断腸の思いですが、この間の事情をご賢察の上ご理解を賜りたく存じます。

明治大学は全学の叡智を結集して、この困難な状況の中でも教育機関としての責任を果すべく全力を尽くしています。授業開始に先立つ学習指導については、オンライン動画等を駆使したガイダンスをすでに実施中です。授業についても、感染拡大の状況を注視しながら、対面授業が可能になるまでの期間、Oh-o! Meijiシステム(オンライン授業支援システム)を通じた新入生の皆さんとのコミュニケーション、授業配信等を行い、教育の質を維持する万全の態勢を整えて参ります。

新入生の皆さんに、ぜひ、考えていただきたいことがあります。経済活動のグローバル化は歴史上まれに見る豊かさをもたらしましたが、他方でエネルギー問題、地球温暖化、富の不平等、グローバルな感染症拡大など、国や地域を超えた深刻な問題を生み出しています。富の不平等はさまざまな差別意識の温床となり、「異論の存在」を許さない権威主義の台頭にもつながっています。また、グローバルな感染症は、人類の生存そのものに対する深刻な脅威になりつつあります。

いま、大学はこうした人間の生存と尊厳を脅かす問題に向き合い、これを解決する技術・システム・思想・知恵を生み出すという重大な役割を担っています。「権利自由」「独立自治」を建学の精神とする本学は「人間が人間として生きるに値する平和な社会(世界)」の創出を目指す研究・教育拠点でなければならないと考えています。新入生の皆さんには、常識にとらわれることなく、歴史上まれに見る豊かさをもたらした近代文明のあり方を批判的に振り返り、現代社会(世界)を脅かす問題の解決に取り組んでいただきたいと思います。

幸い本学は、法学部、商学部、政治経済学部、文学部、理工学部、農学部、経営学部、情報コミュニケーション学部、国際日本学部、総合数理学部という10の学部と16の大学院研究科を擁する総合大学で、新入生の皆さんが学部や研究科の壁を超えて学ぶことのできる環境が整っています。また、毎年2100人以上が海外留学を果たし、2400人以上の留学生を迎える、日本でも屈指の国際的な大学です。この環境を最大限に活かし、40年後、50年後の社会(世界)を形作る知恵を備えた人材に育っていただきたいと思います。

新型コロナウイルス感染症の先行きは未だ不透明で不安に駆られることもあると思いますが、デマやフェイク・ニュースに惑わされることなく、物事の本質をしっかりと見極める力を養いましょう。最後に、アルバート・アインシュタイン博士(Dr. Albert Einstein)の次の言葉を共有したいと思います。

Out of clutter, find simplicity. From discord, find harmony. In the middle of difficulty lies opportunity.” (混乱から単純なものを、不和から調和を探し出そう。 困難な状況の中にもそれを乗り越えるチャンスがある)