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祝辞 グローバルな視野で「個」の確立を

理事長 柳谷 孝

このたびの新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、入学式で皆さんに直接ご祝辞を申し上げることが叶いませんが、一言お祝いを申し上げます。新入生の皆さん、このたびはご入学、誠におめでとうございます。新しく明治大学の仲間となる皆さんを、心より歓迎いたします。また、これまで新入生を支えてこられたご家族の皆様に対しましても、篤くお慶びを申し上げます。

さて、明治大学は、1881年に志高き20代後半の3人の若者により創立されました。当時の日本は、封建社会であった江戸時代が終焉し、社会構造が大きく変化した激動の時代でありました。西欧諸国をモデルにした日本の近代化が急務である中、フランス法を学んだ岸本辰雄先生、宮城浩蔵先生、矢代操先生が、近代化に不可欠な「法学」を日本に普及させ、新しい世を作らんと学校をつくりました。それが明治法律学校であり、現在の明治大学であります。

本学は、これまで約57万人の卒業生を輩出しましたが、開校当時の熱き想いは「権利自由」「独立自治」の建学の精神として、現在まで脈々と受け継がれています。今年で誕生100年目を迎える明治大学の校歌には、そうした建学の精神や気風が溢れていますので、皆さんもぜひ覚えて、歌い継いでください。

ところで、目下、日本では少子高齢化に歯止めがかからず総人口も減少局面を迎えていますが、世界に目を転じますと、その人口は現在の76億人から、2050年には98億人に達すると予測されています。こうした状況により、地球温暖化などの環境問題や、水や食糧、エネルギーなどの資源問題に加え、今回の新型肺炎の感染拡大にも見られるような地球規模での難題も増え、その深刻さも増していくことでしょう。

このような時代へと向かう皆さんには、本学で学問の研鑽に励むことはもちろん、「世界の中の日本」という視点に立って世界が抱える課題やその背景を学んでゆくのと同時に、視野を広げたその先の領域へと積極的に踏み出していってほしいのです。感性豊かなうちに実際に見て、触れて、そしてさまざまな経験を重ねてゆくことは、何事にも勝る人生の大きな糧となるのです。また同時に、本学での人との出会いも皆さんのさらなる成長への原動力となりましょう。多様な価値観や文化的背景を持つ人達とも関係を築き、グローバル社会で必要となる「人間力」や「コミュニケーション力」を高めていくことに期待をいたしております。

明治大学では「『個』を強くする大学」という理念を掲げていますが、グローバルな舞台で自律した人間として他者と渡り合うには「individual」すなわち「個」の確立が不可欠です。この「個」を強めるというのは、主体性をもって自ら「考える材料」を発見し、そして「自分で考え抜く力」を磨き続けることにあります。本学での限られた時間を無駄にせず、新たに出会う仲間と切磋琢磨をして、皆さんそれぞれにふさわしい「個」の確立を目指してほしいと、切に願っています。

結びになりますが、皆さんが本学での学びを最大限に活用し、高度な専門性と国際通用性に磨きをかけて、かつ、人間性豊かに成長を遂げられますことを祈念いたし、お祝いの言葉といたします。