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「大学の第三の使命—社会貢献を考える」

副学長(社会連携担当) 源 由理子

大学の使命は長い間、「研究」を通した真理探究と、「教育」を通した人材育成であった。それに新たな役割として「社会貢献」が強調されるようになったのは21世紀に入ってからである。2005年1月の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」では、教育・研究自体の長期的観点からの社会貢献に加えて、国際協力、公開講座等を通じた「より直接的な貢献」も求められるとし、新しい時代の大学の第三の使命として社会貢献を位置付けた。そして、教育・研究機能の拡張としての大学開放の一層の促進(生涯学習機能や地域社会との連携)も常に視野に入れることが重要であるとした。本学ではこの機能を2010年より社会連携機構が担っている。

さらに近年は政府により「リカレント教育」の必要性が提唱されている。リカレントとは「回帰」を意味し、社会に出てからも学校や訓練機関などで学び、生涯にわたって学習を続ける教育のことである。リカレント教育が最初に注目されたのは、1969年のヨーロッパ文部大臣会議における当時のスウェーデンの文部大臣オロフ・パルメ氏のスピーチであった。その後北欧を中心にグローバル人材の教育戦略として普及した。日本においては、人生100年時代において単線型の人生モデル(教育→雇用→退職後)がもはや当てはまらなくなりつつあること、また人工知能をはじめとする技術革新の進展にともなう急激な社会変化への対応などから注目を浴びるようになった。大学の公開講座等を含むリカレント教育の要請は、前述した「より直接的な貢献」のひとつである。アカデミアからは学術的研究・教育の場である大学が実践的な活動を行うことへの批判もあると聞く。しかし知識は社会での応用による新たな発見を通してさらに大きな力になる。その「知の循環の場」を提供することが大学の社会貢献の役割ではないだろうか。

これら社会貢献の活動を効果的に展開するためには、従来にも増して大学の組織横断的な取り組みが必要となる。具体的には学術的な教育・研究資源と、社会資源との間を結びつけるコーディネーション機能である。大学からの一方的な知の提供で終わらない、社会の実践知との循環の機会をいかに生み出せるのかが問われていると思う。

現在はコロナ禍でさらにその対応の変革を迫られている。社会連携機構ではこの機会を、オンライン活用を含んだ変革のチャンスととらえ、全国展開をにらんだ戦略を検討している。そこでは校友会や父母会の皆さんとのネットワークが大切な社会資源となるだろうし、次世代型の社会貢献・社会連携の形を模索することにもなると考えている。
(ガバナンス研究科教授)