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本棚「エリートたちの反撃— ドイツ新右翼の誕生と再生」フォルカー・ヴァイス 著 佐藤 公紀 訳 (新泉社、2,500円+税)



本書は、現在のドイツにおける新右翼もしくは右翼ポピュリズムの思想的な基盤を作り出した、右翼エリートたちの言説とその歴史的系譜、そしてその影響を解明したものである。著者は、2017年に新右翼に関する包括的な著作(邦訳『ドイツの新右翼』長谷川晴生訳、新泉社、2019年)を発表しているが、その6年前に刊行されていたのが本書であった。もちろん、本書が刊行された2011年には、その後ドイツで台頭した移民排斥運動PEGIDAや、今やドイツ連邦議会に議席をもつ右翼政党「ドイツのための選択肢」など存在していなかった。しかし、リベラル・左翼的な規範や政策に対する右翼「エリートたちの反撃」は、すでに2011年の段階で、ドイツ社会で一定の支持を獲得していた。この現象を分析した結果、新右翼に対応するための「覚悟と準備」がいずれ必要となる、と著者は「予言」し、これが的中した。同様の事態に向き合う人々に本書は必読文献である。訳者の努力により、訳文は平易で、解説も丁寧である。この分野の初学者にもぜひ推薦したい。
田中ひかる・法学部教授(訳者は法学部専任講師)