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「パンデミック下における大学広報について」

副学長(広報担当) 上野 正雄

大学における広報の役割について考えてみたい。大学設置基準の大綱化や18歳人口の減少、大学定員抑制法の制定、さらには世界中の生活様式や経済活動を一変させた新型コロナウイルス感染症のパンデミックなど、大学を取り巻く環境は厳しさを増す一方である。また、Twitter、インスタグラムなどをはじめとしたソーシャル・ネットワーク・サービスの発達により、情報は真偽の判断を待つことなく瞬く間に世界中に広がり、大学の講じる施策、その一挙手一投足も常に学内外から厳しい評価にさらされている。

このような状況の中、本学は2020年度入試まで14年連続で10万人を超える志願者を集め、全世界に57万人を超える校友を輩出するなど、我が国を代表する総合大学としての地位を築いてきた。それだけに多くの注目を集め、時に多くの叱咤もいただくが、それを超える多くの激励とともに140年の歴史を積み重ねてきたのである。

大学は教育機関である前提として研究機関であり、これまで、新聞広告など対外的な広報活動においては、研究成果の発信という可視化しやすい情報に焦点が当たることが多かった。しかし、コロナ禍の下では、授業の形態や質、さらには授業料など、とりわけ大学の教育機関としての側面に注目が集まっている。コロナ対応として急遽導入されたオンライン授業にあっては、当初こそ、教員・学生ともに少なからず混乱もあったが、学生たちの新たな環境への適応は早く、対面授業が行えないことのデメリットよりも、一部でそれを上回るメリットを見いだせるような教員学生協働の取り組みも次々に生まれている。特筆すべき取り組みについては、すでに全国紙やインターネットニュースなどでも取り上げられている。このようなグッドプラクティスは広く全学で共有され、大学全体の教育の質向上につながっていくことが望まれる。

授業以外にも、例えば、就職キャリア支援の行事はすでにオンラインに移行した形で行われており、オンライン留学なども始まっている。距離的な制約や時間的な制約を超えた交流や講義・講演の録画映像の視聴など、オンライン化が実現する新しい教育・研究・学生生活支援の様式が今まさに芽吹き始めている状況にある。

本学の広報活動のかじ取りを行う明治大学広報戦略本部は、その目的と役割を「効果的な広報活動を全学的に推進することによって、本学に対する認知度の向上を図り、もって本学の経営及び教育・研究活動の発展に寄与すること」と規程に定めている。

本学はポストコロナ時代を見据えた変革の真っ只中にある。いかなる変革がなされるか、それを時代に即していかに効果的に発信するか、今後も選ばれ続ける大学になれるかどうかはひとえにそこにかかっている。パンデミック下の今、本学の真価が問われようとしている。
(法学部教授)