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本棚「防衛の計量経済分析」 水野 勝之ほか 編著(五絃舎、2,400円+税)



防衛に関して政治的には中立的な立場をとりながら、日本の防衛産業に関して経済学的観点から分析を行っている。特徴としては、第1に防衛産業に関するデータがほとんど存在しない中、産業連関表の中からそれを掘り起こしたこと、第2に著者が作成した新たな産業連関表を活用して日本の防衛産業の閉鎖性を実証したことが挙げられる。閉鎖的というのは、日本の防衛産業が他の産業との取引が少なく、双方にとって非効率的になっていることである。

本書の貢献は、これまで見えにくかった日本の防衛産業を経済学視点から「見える化」したことである。日本が経済成長と平和・良好な国際関係とを両立させるためには、防衛産業が適度に経済効率性を維持しつつ、かつ国民の監視の下、肥大化しすぎない必要がある。それを見極める指標を開発したことは高く評価できる。経済的データを見ながら防衛産業について国民が論じる機会を本書が提供したといえよう。
横井 勝彦・商学部教授(編者も商学部教授)