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米国で行われたある調査によると、共感性の高い人はさまざまな民族集団に属する人々の視点や感情を理解し、正しく認識できるという。またこういう人は、偏見や争いも少ないようである。共感力が誤解や偏見を低減させているのである。

では共感性はどのようにして育まれるのか。教育学は、それぞれの個性が認められ尊重されてきた子どもは、他の個性も認め尊重できるようになると説く。つまり個を大切にする教育が、他者の視点を理解し、その気持ちに思いを致す姿勢を育てているということになる。してみると、「『個』を強くする」という本学の教育方針は、自らの視点を堅持する強さを育んでいるだけでなく、多様性を理解し、受容しうる能力をも涵養しているということになろう。

近頃、あちこちでよく耳にするようになった社会の「分断」という言葉は、人々が自分たちの偏狭ながらも切実なる思いに凝り固まって他を排除し、正義を振りかざしている状態を指す。「『個』を強くする」教育が、この分断と対立を乗り越える一つの方策となればと強く思う。