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本棚 「ケースブック アメリカ経営史 新版」 安部 悦生・宮田 憲一ほか 共著(有斐閣ブックス、2800円+税)



本書は、18世紀の棉花プランテーションから現代のGAFAMまで、その時代を主導してきた企業(産業)の16の事例から、アメリカ経営史のアウトラインを学べるテキストである。初版刊行から約20年、その間の目まぐるしい変遷を反映し、ケースや執筆陣が一新された。GMやフォードなどかつての優良企業は活力を失い、経営の「お手本」だったGEは苦境に陥った。時代の主役に躍り出たのは、市場ニーズの変化に迅速に対応して機動力を発揮したハイテク新興企業だ。ジョブズやベゾスらカリスマ経営者による個人の意思決定が優先され、大企業体制や「組織の時代」は終わったかのようにも見える。これらの変化は「大きいことはよいこと」としたチャンドラー理論にも修正を迫った。激変する「不透明な時代」の今こそ、国際経済を牽引し続けるアメリカ企業のダイナミズムを学ぶ意義は大きい。企業家のプロフィールや用語解説、経営理論がコンパクトにまとめられており、読みやすい。経営史の魅力とエッセンスの詰まった1冊を広く勧めたい。
下斗米 秀之・政治経済学部専任講師
(著者は名誉教授、経営学部専任講師)