Go Forward

「財政のさらなる健全化に向けて」

財務担当常勤理事 中里 猛志

新型コロナ禍のもと、入学試験も無事終了し新学期も始まろうとしています。関係者の皆さまの大変なご苦労に対し心より敬意を表するとともに感謝いたします。さて、私立大学は18歳人口の減少をはじめとする厳しい経営環境にありますが、その中で建学の理念に基づく自助努力を柱に教育研究活動を推進していかなければなりません。

在学生3.4万人、専任教職員1.7千人を擁するわが明治大学が教育研究活動を永続的に維持していくには、教育研究・施設整備・情報システム維持更新などの支出とともに、これを賄うための収入が必要です。この収入源は学生生徒納付金収入が主体となりますが、その他にも国庫補助金、受託事業、寄付金、資産運用など多様な収入があります。

大学財政ではこれら教育研究等で必要とされる支出を賄うための収支差額力(収入-支出)を適正な水準に高めることが大事です。この収支差額力は決算書の「基本金繰入前当年度収支差額」により判断できます。本学では6、7年前の厳しい状況からここ数年改善傾向にあり、2019年度ではこの収支差額は30億円でした。2020年度決算はこれからですが新型コロナ禍による21億円の緊急学生支援支出があり、収支差額は大きく減少するものと予想されます。今後必要とされる施設整備や本学の将来像を示す「グランドデザイン2030」等を考慮すると現状の収支差額では不十分で「さらなる高み」を目指すことが望まれます。

そのため、まずは収入を安定的に確保することが必要です。収入総額の約75%を占める学生生徒納付金収入は、収容定員増加に規制がある現在では、ここ数年来未充足である入学定員数を充足させることが現実的で確実な収入増加につながります。

次に学生生徒納付金以外の収入を増やすことです。受託事業収入やリバティアカデミー収入は研究力拡充や社会連携強化の面からもさらなる増加が期待されます。

寄付金も貴重な収入財源です。ここ数年増加傾向にあります。特に2020年度では新型コロナ禍での「学生緊急支援ファンド」寄付には4億円余り、3.6千件と多くの校友会・父母会・卒業生・教職員からの心温まる寄付が寄せられ、本学の「同心協力」の志を強く感じました。これからも校友の求心力を高める方策のもとに寄付力拡大を期待します。

資産運用収入も重要な収入財源ですが、ゼロ金利の経済環境のもと減少傾向にあります。本学では規則上運用リスクを取ることには制限がありますが、長期資金については効率的運用を行うことの検討が必要です。

次に支出について。予算編成上での経常的経費は前年度予算枠をベースとしてきましたが、公平・効率面をさらに重視し配分基準の見直しの検討が必要と考えます。

最後に年金制度についても一言。現行制度自体は加入教職員にとって恵まれた制度といえますが、この制度には責任準備金の不足という将来的債務が内在する可能性や中途就職者の未加入といった課題があり、これらの解決のためにも制度改革が求められます。

以上、本学の教育研究活動を下支えする縁の下の力持ちとして「財政のさらなる健全化」に向け、「前へ」進みたいと思っています。ご協力よろしくお願いたします。