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本棚 『基本経済学視点で読み解くアベノミクスの功罪』 水野 勝之 著(中央経済社、税込2750円)



著者の水野勝之先生は、小難しく解説されがちな経済や経済学を一般の誰もが理解できるよう平易な文章で説明すべきという信条をお持ちである。高校生にも経済や経済学を理解してもらいたいとのこと。これまで出版された水野先生の経済書や経済学の教科書のご著書とたがわず、本書も理解するのが難しかったアベノミクスをやさしい基礎経済学視点でかつ分かりやすく解説している。筆者の独自の視点から、アベノミクスの成功点、失敗点を説明している。世間では「物価上昇2%が達成し得なかった」点を失敗だと見なしているが、アベノミクスが実現した「低失業率、低物価上昇率」の共存は、既存の経済学の常識的組み合わせ「低失業率、高物価上昇率」を打破した画期的状況(失業もせず、かつ生活しやすい)を生んだと述べている。その他、日本にGAFAやファーウェイなどのグローバルな企業が新たに生まれない理由や日本での経済格差の発生を独自の視点で論じている。目からうろこの書である。お薦めしたい。
楠本 眞司・商学部兼任講師(著者は商学部教授)