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「コロナ禍における学生支援」

学務担当常勤理事 岡安 孝弘

2020年春からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、全国の大学はオンライン授業の実施や学生生活の支援において緊急の対応を迫られることになった。本学においては、就任したばかりであった大六野学長の「新型コロナウイルス感染症の影響による退学者を出してはならない」という号令により、オンライン授業を受講する環境を整えることが困難な学生を対象としたノートパソコンおよびWi-Fiルーターの貸与をはじめとして、(1)経済困窮者を対象とした5億円規模の「緊急学生支援金」の給付(一人につき10万円)、(2)印刷環境・通信環境等の学修環境整備のための支援金 (希望学生一人につき1万円)、(3)秋学期オンライン授業実施に伴う支援策として、全学生一人につき4万円支給など、さまざまな学生支援策を展開した。加えて、感染症の流行はもとより、大規模災害などの不測の事態によって被害を受けた学生の支援および本学の教育活動を維持するための支援を目的として、「明治大学学生・教育活動緊急支援資金」を設立し、その資金には、法人からの拠出、校友会・父母会からの寄付のほか、校友や教職員からも多額の寄付が寄せられた。この資金から2021年度は「明治大学学生支援金-コロナ禍でも前へ-」として、約1000人の学生に1人当たり10万円の支援を行っている。

さらに、2020年度の国による新型コロナ対応の支援策として、「学びの継続」のための「学生支援緊急給付金」(家計状況により10万円ないし20万円)が支給され、本学では約3000人の学生が受給している。

また、2020年度から国による高等教育の修学支援制度が開始され、家計状況により、給付奨学金と授業料等減免額を合わせて最大で年額約180万円(支援区分が第Ⅰ区分かつ入学金の支援を含む)の支援を受けることができるようになった。本学においても「明治大学給費奨学金」や「おゝ明治奨学金」など、総額約16億円の給費奨学金が用意され、かつてに比べて返済の必要のない給費型の奨学金が充実してきており、経済的に困難な状況にある学生が学びやすい環境が整いつつあると言えるだろう。

昨年度の新型コロナウイルス感染症の蔓延時には、経済的理由により退学を余儀なくされる学生の急増が危惧された。しかしながら、2020年度の本学の退学者数は過去4年間の平均退学者数を大きく下回る結果となった。これが本学における学生への経済的支援の成果であるかどうかはさらなる精査が必要であるが、これからも学生の学びを支えるために、支援を必要としている学生に必要額を的確に、そして迅速に支援できる奨学金制度を整備すべく努力していきたい。
(文学部教授)