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式辞 学長 大六野 耕作



本日ここに、創立140周年記念式典を挙行するにあたり、寬仁親王妃信子殿下のご臨席を仰ぎ、文部科学大臣代理 事務次官義本博司様、経済産業大臣 萩生田光一様、一般社団法人 日本私立大学連盟会長 田中愛治様、日本私立学校振興・共済事業団理事 小谷隆之様、大学基準協会会長 永田恭介様をはじめ、数多くのご来賓、関係者の皆さまのご臨席を賜りましたことに、大学長として心より御礼申し上げます。

本学は、今を遡ること140年前の1881年(明治14年)、わが国が近代国家建設を急いでいたその時に、「近代市民社会を担う聡明な若者を育てたい」という高い志と教育への熱い情熱を備えた、若き3人の法学者、岸本辰雄先生、宮城浩蔵先生、矢代操先生によって、明治法律学校として設立されました。しかし、私立学校として設立された本学の歴史は、決して平坦なものではありませんでした。1890年頃から始まった民法典論争でドイツ法学が勝利を収めると、ボアソナード博士の薫陶を受けフランス法学を基礎としていた本学は、大きな軌道修正を迫られました。また、この当時の私立大学は、大学という名は冠していても法律上は専門学校であり、帝国大学と同等の資格を持つ独立した大学としての地位を獲得するまでには、なお39年にも及ぶ地道な努力が必要でした。1923年に発生した関東大震災では、本学の校舎・図書館等はすべて灰燼に帰し、その復興は、文字通り学生・教職員・校友の粘り強い協働によって成し遂げられました。

現在の明治大学が、わが国屈指の総合大学の一つとして存在している背景には、幾多の困難や危機に直面するたびに、大学関係者が「同心協力」し、「権利自由」「独立自治」の精神を、その時々の時代の中で具現化してきたことにあると考えています。

こうして、創立140周年を迎えた本学ですが、今また百年に一度という地球規模の問題に正面から立ち向かっています。発生から1年半以上が経過しても、未だ終息をみない新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、単に「大学の日常」を一変させただだけでなく、近代文明そのもののあり方、その中での人間活動のあり方を問い直し、新たな文明モデルを創造するという、重大な課題を浮かび上がらせることになりました。いま高等教育機関である大学は、人間の生存と尊厳を脅かす問題に正面から向き合い、これを解決する技術・システム・思想・知恵を生み出すという重大な役割を担っています。

先の見通せない予測不可能な現代社会は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が複雑に絡み合う「VUCAの時代」と呼ばれますが、現代社会はまさに、さまざまな要素が、あざなえる縄のごとく複雑に絡み合い、問題の解決や、将来への見通しを、より一層難しいものにしています。そうした状況の中で、「権利自由」、「独立自治」を建学の精神とする本学は、「人間が人間として生きるに値する平和な社会(世界)」の創出を目指す研究・教育の拠点でなければなりません。

幸い、この10年間で、本学の教育・研究はグローバルな広がりをみせ、海外の500に近い大学との学術・学生交流を通じて、世界的な課題にグローバルな観点から解決策を提示できる学生や研究者を多数生み出してまいりました。2019年度には、1年間で2300人を超える学生が海外の協定大学で学び、また、2300人を超える外国人留学生が本学で学んでいます。今後の10年は、こうした学生交流を基盤に、世界の大学と、講義や研究、さらには教員・研究者を共有する、いわば国を超えた「教育・研究の融合」を実現する準備を進めて行く所存です。そして、世界の諸問題に正面から立ち向かい、自ら状況を切り拓く「前へ」の精神を持ち、問題解決への道筋を提示できるThinkers(思索者)であると同時に、そのアイデアを社会に実装できる能力を備えたDoers(実行者)を広く社会に送り出してまいりたいと存じます。

結びになりますが、本日、ご臨席いただきました皆さま方をはじめ、本学をこれまで支えてくださったすべての方々に改めまして感謝を申し上げますとともに、今後とも一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。本日は誠にありがとうございました。