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「新入生の英語力」理事 尾関 直子

一般的な中学生、高校生の英語力は、10年前と比べると格段に向上している。文部科学省が2019年に行った「英語教育実施状況調査」によると、CEFR A1レベル(英検3級)相当以上を達成している中学生は2011年で25.5%であったのが、2019年で45.0%、CEFR A2レベル(英検準2級)相当以上を達成している高校生の割合は、2011年で30.4%であったのが2019年で43.6%と増加している。このように、英語力が伸びている背景には、2009年に行われた高等学校学習指導要領の改訂がある。英語は、「コミュニケーション英語」の他に「英語表現」という科目がつくられた。前者は総合的に4技能を育成する科目であり、後者は、発信力となる「話す力」、「書く力」に重点を置いたコミュニケーション能力の育成に重点が置かれた科目である。また、英語の授業は英語で行うことを基本とすることが学習指導要領に初めて明記された。このように、英語力を育成する学習環境はおよそ10年前から整いつつあった。

さらに、小学校の学習指導要領が改訂され、2020年度から小学校5年、6年生で英語(外国語)が教科として教え始められ、小学校3年、4年生では、英語(外国語)活動も始まった。すでに、2011年から小学校5年、6年生で英語活動が行われていたが、それが正式な科目に変更されたのである(「科目に変更された」ということは、成績が伴うということである)。科目になると同時に授業時間も週2コマに増加した。これにより、学習する英単語数も2000年代では、中・高合わせて2100~2700語であったのが、2010年代で中・高合わせて3000語、今回の学習指導要領改訂で小・中・高を合わせて4000~5000語を学ぶことになった。一般的な高校生は、20年前と比べると約2倍の英単語を卒業時までに学ぶことになる。

今回の学習指導要領では、英語の領域の分け方も新しくなった。今までは、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能に分けられていた。しかし、教室内で「話し合う」コミュニケーション活動があまり行われていないことを鑑み、「話す」分野を2つに分け、「話す(やりとり)」、「話す(発表)」と4技能5領域にした。これにより、「話す」技能に関しては、「発表」という言語活動に偏向していた授業が、即興的に話して、生徒同士がやり取りする言語活動にも重点を置く授業へと変化していくことが期待されている。

留学経験がなくても、総合的に優れた英語力を持った新入生が増加していると感じている。例えば、国際日本学部では、新入生が4月に受験するTOEFL ITPスコアも13年前と比べると2021年現在、約40点増加している。現在の明治大学の学生たちの半数近くは、少なくとも小学校で2年間英語に触れた経験があり、新しい英語教育を受けてきた学生たちである。また、10年後には、小学校で4年にわたり英語を学習した経験がある学生たちが入学してくる。小・中・高の英語教育の変化に伴い、大学の英語教育も変化していく必要がある。
(国際日本学部教授)