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「18歳成人と学生支援」監事 髙岡 香

本年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。これにより、18歳以上20歳未満の者が、同日一斉に成人になります。これまで、ほとんどの学生が未成年で入学してきましたが、今年度からは成人として入学します。20歳を成人としたのは、明治9年の太政官布告を明治29年に制定された現行民法が引き継いだものです。この145年間続いてきた制度が変わるのですから、改正当初は不都合が起きないか心配されます。

成人になるということは、父母の親権に服さなくなるということと、親権者など法定代理人の同意がなくても契約等の法律行為を単独でできるということです。親の同意を得ずにさまざまな契約ができるようになり、親の同意がないことを理由に契約を取り消すことができなくなるため、マルチ商法、キャッチセールス、資格商法などの悪徳商法の被害に遭うことが懸念されます。50年近く前のことですが、私は、明治大学の合格発表を見に行った和泉キャンパスで、英字新聞の契約をしつこく勧誘されました。当時から嫌なことは断るタイプであったので断りましたが、断りたいけれどしつこい勧誘に負けて契約をした人がいたかもしれません。契約は、正しく理解した上で納得して締結すべきものですが、成人になったからといって、ただちに判断力や断る力が身につくわけではありません。

18歳で成人になるということは、自立してもよいということであって、必ず自立しなければならないというわけではないという考え方により、別居親の養育費支払義務は、子が18歳で成人となってもそれにより終了するわけではありません。成人になっても、学生は親からの物心両面の援助が必要とされます。ただ、親からの物心両面の援助が望めない学生もいます。親から虐待を受けている未成年者の中には、成人することで、自分の名義で部屋を借り、親の束縛から逃れることを待ち望んでいる人もいます。また、18歳になれば親の同意なく婚姻できること、性別の取り扱いの変更審判を受けることができるなど、成人として自己決定の幅が広がります。それにより、学生が抱える問題もますます多様になることが予想されます。

問題を抱える学生に対し、適切に支援することも大学の重要な役割だと考えます。成人である新入生にどのように支援すべきか考えていたところ、学生相談室相談担当者の「気軽に相談室を訪れることをお勧めします。 答えを教えることはできませんが、一緒に考えて、学生が自ら答えを出すことを手伝えるかもしれません」という一文を目にしました。支援の基本であるこの言葉が、すべての新入生に届くことを期待します。