Go Forward

「ニューノーマル時代の担い手となる皆さんへ」

理事長 柳谷 孝

祝辞に入ります前に、新型コロナウイルス感染拡大により多大な苦難に遭われた皆さまに衷心よりお見舞いを申し上げますとともに、その渦中で私たちの命を守り、生活を懸命に支えておられる方々に深く感謝を申し上げます。依然としてこの惨禍が続いておりますが、安心・安全で活気ある日常生活が送れる日が一日も早く到来しますことを、心より願っております。

あらためまして、卒業ならびに修了を迎えられる皆さん、このたびは誠におめでとうございます。コロナ禍という予期せぬ困難により学修環境や生活環境が一変し、不安や戸惑いがある中でも、揺るぎない信念とたゆまぬ努力のもと本学で研鑽に励まれ、苦労を乗り越えて学位を取得されましたことに心より敬意を表します。また、オンラインを通じてご覧いただいておりますご家族の皆さま方にもお慶びを申し上げますとともに、コロナ禍の難しい状況の中、本学へ多大なるご理解とご協力を賜りましたことに学校法人明治大学を代表し、厚く御礼を申し上げます。

さて、私たちは今、後の歴史に問われるであろう大きな転換期に差し掛かっています。現下の世界情勢に目を向けますと、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、東西冷戦以降の国際秩序を根底から揺るがし、アジアにおいても北朝鮮問題はもちろんのこと、ミャンマーやアフガニスタンにおける紛争、さらには台頭する中国の動向も含めて、世界の先行きに不透明感と緊張感が増しています。また、コロナ禍は我々の価値観や行動様式に大きな影響を与え、持続可能な世界を目指すための国際的な目標である「SDGs」や、IT技術により生活やビジネスをより良く変革させる「DX・デジタルトランスフォーメーション」などに対する取り組みが一層加速しています。さらにはメタバースと呼ばれる仮想空間を事業に適応させる「MX・メタバーストランスフォーメーション」への関心が高まるなど、今後社会はさらに劇的に変化を続けていくことでしょう。

そのような誰も経験したことのないニューノーマル時代の真っただ中へと皆さんは向かっていくことになります。しかしながら、すでに皆さんは、入学前には想像もしていなかったパンデミックの渦中においても、日々自己を律しながら勉学に励み、卒業という一つの目標を達成されました。そのような意味では大いに自分に自信を持っていただきたいと存じます。ただし、自信も持ち過ぎますと、それは「自惚れ」となります。従って、謙虚でなければなりません。一方、謙虚になり過ぎますと、今度は「卑屈」となります。従って、自信と謙虚の間に自分を置いて、その姿を心の鏡に写し、写った等身大の自分をさらに成長させるという心構えが、これからの社会で活躍していく上ではとても大切なことになります。自信と謙虚の間に自分を置くというセルフガバナンスと、等身大の自分をさらに成長させるという主体性。これこそ本学がモットーとする「個を強くする」ことの神髄でありましょう。母校明治大学で培った揺るぎない「個」を掲げ、不屈の明治魂を胸に、未来を創造してゆく気概をもって、これからの時代を切り開いていってください。そして、地球市民の一員として、国や人種の違いを超えて協調できる世界を希求するとともに、人類と地球環境との調和した未来を創造することに、皆さん一人ひとりが貢献してほしいと切に願っています。

結びになりますが、本学の在学生は大学院生も含め現在約3万3000人おり、そのうち奨学金を利用している学生は、延べ1万4733人に上ります。こうした学費面はもちろんのこと、学内の各種施設整備や体育会各部の活動などについても、校友をはじめとした多くの方々のご寄付によって支えられております。本日卒業される皆さんも、今後社会でご活躍いただき、その暁には、母校そして後輩学生達の学修環境を支えるために、寄付という名の紫紺の襷をぜひつないでいっていただけますよう、お願い申し上げます。

本日の新しい門出に際し、皆さんの前途に幸多きことを心より祈念いたし、祝辞といたします。ご卒業、誠におめでとうございました。
【卒業式次第より転載】