Go Forward

「学校法人ガバナンス改革への期待」

監事 奥山 弘幸

学校法人のガバナンス改革に向けて議論が進んでいる。その結果を受けて、私学法の改正がなされるとの報道も見受けられる。議論の内容は、理事会・評議員会の権限やあり方等が主要な論点であるが、監事に加えて会計監査についても論点となっている。公認会計士でもある監事として、関係する論点について考えてみた。

監事監査は、業務監査、財産状況監査、理事業務執行状況監査を目的としている。公認会計士による監査は、私学法ではなく私学振興助成法の要請に基づき実施されている。このため、監事は公認会計士の監査結果に法的には依拠できない。一方で、監事監査、内部監査、公認会計士監査は相互に連携して監査を実施することが要請され、本学においても、公認会計士とは緊密に連携し監査を実施している。

学校法人は、学生・保護者・教職員・取引先等の多くの利害関係者がいる公的な存在である。幅広い利害関係者がいる上場会社では、会計監査人による監査が会社法で義務付けられており、監査役は、会計監査人の監査結果に依拠して自らの監査意見を形成する。このことは、監査役の監査報告書に「会計監査人の監査の方法及び結果は相当であると認める」と表現される。会計監査人の監査報告書は、監事の監査報告書と共にホームページで公開され誰でも閲覧できる。本学においては、ホームページで公認会計士の監査報告書も公開しているので監事の監査報告書と共にご覧いただきたい。学校法人の機関として会計監査人が設置され、財産状況監査は会計監査人の監査結果に依拠できるのであれば、監事は他の監査目的について、より効率的に監査をすることができると考える。

監査は内部統制システムの整備運用の程度によって、大きな影響を受ける。組織が複雑となれば、内部統制システムは欠かせないが、そのあり方は当然に一様ではない。今回の議論がきっかけとなり、私立大学での内部統制システムの整備がさらに進めば、学校経営に大きなプラスとなると思う。

子法人について、監事・会計監査人の調査対象とすることも論点にあげられている。学校会計に連結会計を導入し、連結の計算書類を会計監査人が監査し、監事は会計監査人の監査結果に依拠して監査意見を形成すれば、監事は恒常的に子法人を監査することにもなり、効果的な方策と思われるが、いかがであろうか。

最後にガバナンス・コードの活用と相まって、今回の議論が学校経営の透明性をさらに高めるような実効性ある改革となることを期待したい。