Go Forward

本棚 「市場競争のためのビジネス・エコノミクス」 三上 真寛 著(学文社、税込2530円)



1953年に設立された明治大学経営学部は、神戸大学に続く私学最初の経営学部であるが、来年は70周年を迎える。その経営学部で近代経済学を担当されてきた先生は、伊東光晴先生、長尾史郎先生、藤江、そして三上真寛先生等である。

伊東光晴は、1980年代末に、現代価格理論は、行動科学(消費者の行動や同業者の行動が不確実であることを分析した)に即した多元的理論の必要性を説き、それは市場が価格を決定する財、製造業者が決める価格、流通業者が決める価格等であるとした。

本書は、2部構成となっているがⅠ部では完全競争市場を前提とした標準的な理論を解説し、Ⅱ部では、市場構造や企業行動の変化に伴う多元的価格理論を、数値例も用いながら解説しているが、理論家の写真もあり、さながら学説史にもなっている。

著者は組織論も意識しつつ、戦略論という観点から、現代の市場競争と価格の関係について考察し、理論を生き生きと記述している。経営学を学ぶための経済学、かつ経営学に影響を与える経済学である「ビジネス・エコノミクス」をタイトルとする本は少ないが、その一つの到達点を示す好著であり、著者の力量を示すものである。
藤江 昌嗣・経営学部教授(著者は経営学部准教授)