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本棚 「国際武器移転の社会経済史」 横井 勝彦 著(日本経済評論社、税込5720円)



本書で扱う武器移転とは、ライセンス供与や技術者の受入・派遣、さらには武器の運用・修理・製造能力の移転等も含んだ概念である。武器の拡散・膨張という地球規模の問題に立ち向かうには、武器移転の連鎖の世界史の解明が不可欠である、というのが本書の主張である。

第Ⅰ部では、軍備規制の無い第一次大戦以前を対象として、軍艦建造企業の台頭、日英間の武器移転、英独建艦競争などの無秩序な展開が論じられる。

第Ⅱ部では、ワシントン海軍軍縮以降を対象に、航空機での日英・日独間の武器移転、ドイツの秘密再軍備、航空機生産拠点の世界的拡散に論及し、この時代を「軍縮下の軍拡」と位置づける。

第Ⅲ部では、冷戦期を対象として、軍事援助を背景とした米ソの戦略的武器移転と、それを巧みに利用して軍事的自立化を目指すインドとの関係に注目する。ソ連(ロシア)に依存し続ける武器輸入国インドの分析は示唆的である。この点も含め、本書は、今日の「ロシアのウクライナ侵略」を考える上でも有効な視座を提供している。
下斗米 秀之政治経済学部専任講師(著者は元商学部教授)