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「大学のガバナンスを考える」

商学部長 出見世 信之

学校法人ガバナンス改革会議は、2021年12月に「学校法人ガバナンスの抜本的改革と強化の具体策」を公表し、学校法人に評議員会の役割の強化を求めた。これに対し、日本私立大学団体連合会は、評議員会の権限は限定的であるべきとする声明を出した。その後、文部科学省は学校法人制度改革特別委員会を設置し、2022年4月に両者の折衷案とも言うべき内容で報告書を公表する。そこには、理事会と評議員会が相互に監督できるよう理事と評議員の兼任は認めないこと、法令違反をした理事に評議員会が解任を請求できることなどが盛り込まれた。

これらの内容は私立学校法改正案に盛り込まれ、国会で議論されることになる。法的規制はハード・ローであるが、ソフト・ローと言われる自主規制により、すでに大学のガバナンス改革は行われている。本学も加盟する日本私立大学連盟は、2019年6月に「私立大学ガバナンス・コード」を公表し、加盟校にその遵守と遵守状況の公表を求めている。このコードは、私立大学の多様性の尊重を前提とし、「自律性の確保」「公共性の確保」「信頼性・透明性の確保」「継続性の確保」を守るべき基本原則として、それぞれの原則の下に守るべき遵守原則などを明記している。

「私立大学ガバナンス・コード」は、遵守できていない項目について説明することを求めている。本学は、2022年3月に「私立大学ガバナンス・コード」の遵守状況を公表した際、「信頼性・透明性の確保」の基本原則にある「遵守原則3−2 理事会による執行、監督機能の実質化、不正防止制度整備」について遵守不十分であったので説明を行っている。キャンパスハラスメントや研究不正の防止体制は既に整備しているが、包括的で全学的な内部通報体制や相談体制の仕組みの導入は、学内で検討を重ねている段階で最終決定には至っていない。この点は、実効性を担保しながら、次回の公表までに遵守しなければならない。

現在、大学にはガバナンス改革が求められているが、それぞれの私立大学の多様性は尊重されるべきである。理事会、評議員会はいかなる関係にあるべきかを規範的に論じる前に、理事会と評議員会は相互に監督し、緊張感を維持しているのかを確認すべきである。この点、本学の理事会、評議員会については、その構成において教職員と校友の数の均衡が伝統的に維持され、現在も、健全な緊張関係にある。評議員会も、「シャンシャン」では終わらない。理事、評議員の出自も話題となるが、出自よりも、理事、評議員がそれぞれの職責を全うし、大学の持続可能な運営に貢献できているかがガバナンスの議論において問われるべきである。
(商学部教授)