Go Forward

「一層の財政強化のために」

政治経済学部長 小西 德應

昨年11月1日に開催された創立140周年記念式典会場で本学の10年後に向けた「MEIJI VISION 150-前へ-」が発表された。2019年に出された「グランドデザイン2030」を基にした基本計画だが、理事長と学長がそろって発表したことに大きな意義があった。何より施策実現の機動化が期待できる。その「VISION 150」の内容を見てみると、「2030」では5番目に置かれていた「大学運営における全学ビジョン」が「大学経営における全学ビジョン」として1番目に位置付けられた。大学運営を「経営」と捉え直し、「寄付金収入」がそのカテゴリーに新たに加えられた。教育、学生支援、研究、社会貢献の他の4カテゴリー計画推進のためにも経営、とりわけ財政力強化は不可欠である。実は式典当日に政治経済学部は「教育研究支援資金」を創設したのだが、それは「VISION 150」と同じ財政の観点から学部独自に政策展開することを意図してのことだ。

ここでいくつか確認しておきたいことがある。⑴本学の財政状況はここ数年改善してきているものの、学校法人の経営状況を総合的に示す比率(収入に対する収支差額の割合)を見ると、関東の同規模大学の中では下位にある。⑵収入源の1位である学費は毎年5千円の漸増がなされているが、いつまでも続けられるものではない。⑶収入源第2位の政府補助金も大幅な増額が望めない上に、補助金の中には、プログラム期間が終われば多額の固定費となり財政負担となるものが少なくない。

現理事会が大学経営に積極的に取り組もうとしていることは「VISION 150」からも分かるが、上記の状況を前提に、本学が独自に取り組める財政強化策をいくつか挙げておく。見聞を通した手掛かりを紹介するのみだが、財政強化だけにとどまらない効果を持つと考える。

一つは本学付属の日本語学校の設立である。目新しい提言ではないが、本学のロケーションを生かすとともに、ITも使いながら世界的展開が期待できる。世界では今なお日本語に対する興味は高く、とりわけアジアでは日本自体に対する関心が高い。韓国の延世大学が韓国語教育をリードしているように、本学が日本語学校を開設することで、海外からの留学生やビジネスパーソン等を呼び込み、学生確保につなぐとともに、国際的知名度を高めることができる。独自のテキストを作成すれば一層の効果がある。もう一つは、寄付の促進策である。多くの校友と会って驚くことは、相当なお金と強い母校愛があるものの、本学との関係をほとんど持っていない個人経営主が多いことだ。寄付を従来通り広く呼びかける一方で、その方々の想いを糾合することが肝要だ。戦略的な仕組みづくりとともに、明確な意図をもってお金を使うことも資金管理の一つと認識した対応が求められる。
(政治経済学部教授)