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本棚 『まちづくりの思考力:暮らし方が変わればまちが変わる』 藤本 穣彦 著(実生社、税込2530円)



近年、「まちづくり」に興味のある人々は確実に増えている。しかし、「何からはじめればよいのか?」「自分に何ができるのか?」と悩む者は少なくない。

無理もない。実際の「まちづくり」には、理論だけでなく、実態を把握し「問い」をみつけだす思考力、地域の人々とつながるコミュニケーション力など、多様なスキルが求められる。これらの力を同時並行で身につけるのは「至難のわざ」ともいえる。

本書は、この「至難のわざ」を可能にする入り口を拓いてくれる。まちづくり理論の解説書、研究方法の指南書、あるいは「まちづくり」の事例集と、本書は読者によって七変化し、新たな視点、知識、そして疑似体験を提供する。著者の経験に基づいた豊潤な示唆により、「まちづくり」に向き合う者自身の課題にも気づかせてくれる。

各地を転々とし、フィールドワークに身を置いた著者だからこそ、「至難のわざ」を言語化できたのではないか。「まちづくり」に関心があるすべての者に手に取ってもらいたい。

奥山 雅之・政治経済学部教授(著者は政治経済学部准教授)