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本棚 『“進化している発酵食品”学』 佐々木 泰子 編著(明治大学出版会、税込2860円)



発酵食品は伝統食品であるというイメージを持つ人が多いであろう。しかし本書のタイトルには、『発酵食品は現代の食のニーズに合わせて進化している』という意味が込められているという。

本書の1〜3章は著者の専門であるヨーグルト、4〜7章は醤油、ビール、ワイン、チョコレートといった幅広い発酵食品について書かれている。食品開発に携わる企業研究者が各章を執筆しており、最新技術で発酵食品の価値を高めるという『進化』の過程を知ることができる。明治大学農学部で著者が開講していた「発酵食品学」をベースにした内容であるが、多くの受講生を集める人気講義であったのも納得の充実度である。

ヨーグルトと乳酸菌に興味がある読者には、最新の専門知識が惜しみなく披露されている1~3章がお勧めである。特に著者が執筆した3章は、ヨーグルトの世界的広がりを乳酸菌の生存戦略と捉えており、圧巻の読み応えである。一方、もう少し気楽に楽しみたい読者は、興味のある食品の章をつまみ食いして読むこともできる。食卓での蘊蓄がたくさん手に入る、楽しい読書になること請け合いである。
竹中 麻子・農学部教授(著者は元農学部教授)