Go Forward

「次の時代をデザイン・実現する知恵とスキルを身につけよう!」

学長 大六野 耕作

本日、ここ日本武道館で大学生活の第一歩を踏み出される新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、これまで新入生の皆さんを陰に日向に支えてこられたご家族の皆さまにも心からお祝いを申し上げます。誠におめでとうございます。この3年間というもの、われわれは国・地域を問わず、100年に一度といわれる新型コロナウイルス感染症のパンデミックがもたらした「生き難さ」と格闘する日々でした。本学では2019年度卒業式と2020年度入学式をやむなく中止しました。2020年度卒業式、2021年度入学式(2020年度入学生も対象)からは、通常に近い形で式を挙行いたしましたが、残念ながら卒業生・新入生のご家族の皆さまをお招きすることは叶いませんでした。本日、4年ぶりに人数制限の下とはいえ、ご家族の皆さまを春爛漫の武道館にご招待し、皆さまと共に新入生の入学をお祝いできることをわれわれ教職員も心より喜んでおります。

その発生から3年、長く暗かったトンネルの先に、ようやく新型コロナウイルス感染症の終息への確かな光が見えてきたように思います。とはいえ、これまでわれわれが享受してきた西欧近代文明のあり方に対する本質的な問いの多くについては、いまだに解答が得られていません。大量の化石燃料の消費に支えられた経済活動は、皮肉なことに、人間の生存そのものを脅かす気候変動や環境破壊を生み出し、経済活動を効率化し人間の生活を豊かにするはずであった科学技術が、かえって人間の差別や社会の分断を生み出す場合があることを、われわれは改めて思い知らされました。ロシアによる一方的なウクライナ侵攻によって始まった戦争は、いまだに終わりが見えず、米ソ冷戦終結後に一気に勢いを得た自由とデモクラシーへの奔流が、必ずしも人間の自由、平等の実現、さらには、平和な世界秩序の創造にはつながらなかったこと、地域によっては、人権を無視した「強権的な専制主義」や「大衆迎合的なポピュリズム」を生み出しつつあることを象徴するものともなりました。

今こそわれわれは、新たな文明のモデルを創造するという歴史的な課題に立ち向かわなければなりません。先の見通せない予測不可能な現代社会は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が複雑に絡み合う「VUCAの時代」と呼ばれますが、現代社会はまさに、さまざまな要素があざなえる縄のごとく複雑に絡み合い、問題の解決や将来への見通しをより一層難しいものにしています。そうした状況にあっても、本学は先に述べた人間の生存と尊厳を脅かす問題に向き合い、これを解決する技術・システム・思想・知恵を生み出すという重大な役割を果たそうと決意しています。「権利自由」「独立自治」を建学の精神とする本学は「人間が人間として生きるに値する平和な社会(世界)」の創出を目指す研究・教育の拠点として、新入生の皆さんと共に、常識にとらわれることなく、平和で豊かな時代を切り拓く知恵を生み出していきたいと考えています。そのために必要な教育・研究条件の整備も不断に行なっています。

新入生の皆さん、明治大学で、次の時代をデザイン・実現する知恵とスキルを身につけてください。そして、われわれ教職員と共に、次代を切り拓く新たな価値の創造という事業に加わってください。皆さんこそが、次の時代を生きる主役なのですから。
【入学式次第より転載】