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本棚「パンデミックと行政法」—特措法を総括し考える— 木村 俊介 著(信山社、税込9680円)



新型コロナ対策は、感染症法上「5類感染症」への移行によって、一つの節目を迎えた。街中ではマスクを着ける人が減り、観光地にも人出が戻ってきている。だが、3年以上にわたったコロナ禍は、社会に大きな影響を与えただけでなく、政府の危機管理政策に関してもさまざまな課題を突き付けており、これを検証することは、次のパンデミックに備える意味でも重要である。本学ガバナンス研究科の木村俊介教授による本書は、新型コロナ対策の中心を担うことになった「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に焦点を当て、国会論議も紹介しながら、国と地方との関係、保健衛生行政の特殊性、法的規制の限界点等を論じ、現代社会における行政法原理や法政策について考察したものである。「国民の命か、経済生活か」という究極の選択を突き付けられた国家は、どう行動したのか。行政法を勉強している皆さんは具体論を知るサブテキストに、公共政策学に関心がある皆さんは国会審議のエッセンスを知る上で、参考になるのではないだろうか。

長畑 誠・専門職大学院ガバナンス研究科教授(著者も専門職大学院ガバナンス研究科教授)